toyoca

シアター・プノンペンのtoyocaのレビュー・感想・評価

シアター・プノンペン(2014年製作の映画)
3.9
初めて観るカンボジア映画は、話の展開が上手く、とても引き込まれた。

昔の映画に出演していた母の美しい姿を見た娘が、フィルムの最後の一巻「the last reel(原題)」が見つからないということで、母を勇気付ける為にラストシーンを撮り直す、というストーリー。そこに、思いもよらない母や父や駐輪所のオヤジの過去が見えてくる。どんでん返しもあり、時代に翻弄された人たちの苦悩が見えてきて、辛くなった。

クメールルージュはもちろん知っている。酷い歴史を知った時には衝撃を受けた。自分の生きた人生より前の出来事ではあるけれども、ごく最近には違いない。しかし主人公の女の子は最初そんな影も見せない奔放なオープニングで、まだ行ったことのないカンボジアが、タイのカオサンのようなギラギラした空気感を感じた。しかし、お見合い結婚を強引に進められたり、女はおとなしく静かに話し後ろに隠れる、ような男尊女卑もあとから感じられ、現代と過去の狭間に悩む主人公が、過去の映像と新たに撮り直す結末に重なった。

迫害された過去、裏切りの過去、隠したい過去、カンボジアに生きる大人には、皆避けられないトラウマがあるのだろう。母役の女優さんは、クメールルージュ時代に唯一生き残った女優だという解説を見た。きっと、映画と自分の人生を重ねただろう。その事実が、余計に苦しくなった。
toyoca

toyoca