モウドクウサギ

メッセージのモウドクウサギのレビュー・感想・評価

メッセージ(2016年製作の映画)
4.8
「プリズナーズ」「灼熱の魂」を観て、捻れているが、その独特の描写と、物語の強さからドゥニ・ヴィルヌーヴ作品は外すまいと決めていた。前年のベネチオ・デルトロ炸裂映画「ボーダーライン」も記憶に新しく、他作品に喩え難い独自性を醸している彼が、まぁ、普通のSFを撮るわけない。今作の展開は、血湧き肉躍るアクションは皆無で、言わば思考実験の類を、アカデミー音響編集賞お墨付きの、もったいぶったドヨーン、モクモク演出で盛り上げて行くタイプだ。よって、退屈してしまう人と評価は極端に割れるだろうが、それこそドゥニ・ヴィルヌーヴ作品らしい。
世界各国12ヶ所に降りたった、不明物質・バカウケタイプのUFOに乗ったエイリアンの目的は何か?言語学者がコミュニケーションを図ろうとする中で、彼らの思考以上の世界に対する概念に重なり、あるビジョンが浮かび上がってくる。極めて優れたSF原作に支えられた面も大きいが、ある考えを極度に拡大解釈すると、意識・認識が跳躍するといった発想自体は面白く、なんと言ってもタコ好きの僕にはうってつけの一作となった。
《言語が意識・考え方を規定するのか》というのをテーマにしたのはアニメ映画化した「虐殺器官」があったが、「メッセージ」も同系と言えそうだ。前者は言語の違いによらず、一定のルールに従って読み上げると虐殺をアジテートできるもので、では、後者は?と観ると面白いかもしれない。