くり

メッセージのくりのレビュー・感想・評価

メッセージ(2016年製作の映画)
4.9
※再鑑賞

先日映画館に行った時、同監督の次回作『DUNE/砂の惑星』の予告をやっていて、急に無性に本作を観たくなり何度目かの鑑賞。

いやー、やっぱり何度観ても素晴らしいと思う。
生涯で好きな作品を5本選ぶなら、その中にこの作品を入れたい。

ネタバレになるので詳しくは書けないけど、本作は冒頭から"ある仕掛け"が散りばめられている。ラストシーンまで見終えると全体が円環構造になっていることに気がつき、冒頭シーンの意味がようやく分かる作りになっているのだが、初めて観てそれに気付いた瞬間鳥肌が立った。映画を良く観る人であればあるほどミスリードされてしまう仕掛けではあるが、この仕掛けには心底驚いた。

そしてそれを踏まえた上で再鑑賞すると、主人公のルイーズの決断に心底感銘を受ける。心が震えるほどの感動。こんな感覚を味わえる作品はそうそうない。

この作品が本当に凄いなと思うのは、SF映画として最高難度の挑戦をしていて、見事に成功してみせている点だ。個人的に良いSF映画には、適度に現実離れした仮説と設定が存在し、それを様々な工夫を凝らして語って適度に説得力を持たせている作品が多い印象がある。一見あり得ないようなことも、「なるほど、だったら確かにあり得るかもな」と思える作品。仮説が現実的過ぎると面白味は無いし、説得力が無いと荒唐無稽でバカバカしい映画になってしまう。

本作で言うと、ヘプタポッドの"言語"を理解できると、彼等の様に時空を認識できるようになる、という仮説。これが前述した冒頭シーンに繋がるのだが、様々なディテールと演出と確かな演技によってその仮説に説得力が出て、更にそこに深みのある人間ドラマも織り交ぜるという離れ業。

観た後、自分のなかの色んな"当たり前"が揺らいだのを覚えている。大袈裟ではなく、人生観が変わったと言うか。だとしたら、これほどまでに良く出来たSF映画が他にあるだろうか。

いつか自分にルイーズのような決断をしなければならない瞬間が訪れたとしたら、どのような気持ちになるのか考えてみる。
そして、その決断やその先の結果がどうであれ、いつ何時もその瞬間を大切に生きないと、と思う。
くり

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