パグレ

メッセージのパグレのレビュー・感想・評価

メッセージ(2016年製作の映画)
4.0
ざっくり言うと、とつぜんハッピーターンみたいな形の舟で現れた謎の文明と何とかして意思疎通を図ろうとする話・・・です
言語学的、哲学的な映画でした

2か国語を話せるバイリンガルの人は多重人格を使い分けていることが社会言語学的に判明しています
例えば日本語には「わびさび」という言葉がありますが、英語にはそれに該当する言葉が存在していません
強引に英語で表現するなら「simple and emotional(感情的な質素さ)」とでもなるのかもしれませんが、わびさびという言葉のニュアンスや「あの感じ」は日本語特有のモノなので、アメリカの人が"Wabisabi"を感覚レベルで理解するには日本語を身につけるしかないのです
われわれ日本人がrageとfuryの使い分けに困惑してしまうのに似ているかもしれません

そういう曖昧で抽象的で無限に想像が膨らみ、見る人によって色んな性質が備わるであろうテーマを映画という手段で見事にカタチにしてのけたのがこの作品
娯楽性という面では平凡な映画だったかもしれないけれど、興味深さという点においてはかなり奥が深かったです

ハッピーターン星人とコミュニケーションをはかろうとして、身振り手振りジェスチャーも交えて必死に彼らの言語を研究する主人公ルイーズ
「他国の言語」ですら理解することによって新たな人格が解き放たれるレベルで価値観が広がるというのに、文法どころかそもそも文字ですらないシンボルじみた図柄(複雑な顔文字のようなもの)を用いる彼らの言語と向き合うことで、果たして彼女は一体どのような"Wabisabi"を理解することになるのだろうか?


大体のSF映画は大きく分けると、リアリティを追求した作風と常識の殻を打ち破る作風の2パターンに分類されるわけですが、この作品にはちょうどいい感じでその両方の性質が備わっていると感じました
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