あでゆ

アントマン&ワスプのあでゆのレビュー・感想・評価

アントマン&ワスプ(2018年製作の映画)
3.5
元泥棒で離婚歴もあるアントマンことスコット・ラングはFBIの監視下にあり、最愛の娘ともなかなか会えずにいた。ある日、新型スーツでパワーを手にしたワスプことホープ・ヴァン・ダインと、アントマンスーツの開発者ハンク・ピム博士が彼を訪ねてきてスコットに助けを求める。

素直な感想としてはめちゃくちゃ不思議な映画。
タイトルが「アントマン2」ではなく『アントマン&ワスプ』というところからもわかるように、あらゆる面でフラットな作品。

前作でも義理の父親と和解したりとかそういった面が見られたけど、今作は彼らの家族とも仲良くなるし、一方でワスプともパートナーの関係となる(しかも性的ではない)。しかも娘は良好に二者間を往復するというフラットさ。
さらに悪役は娘に手をかけようとせず、一歩踏み止まるフラットさ。FBIやギャング、ゴースト達に至るまで彼らは個人的な悪や恨みに染まることがなく、自分たちの営業活動や利益を優先した結果争っているだけで、それらが解消すれば手を出そうとしないフラットさ。

それどころか、そもそもアントマンサイドも力の私的利用なので、本作には善も、大きな悪も存在しない、非常にコンパクトな一作。
もっといえばスコットは基本的にちゃんと2年間の自宅謹慎を守っているし、ゴーストはちゃんと罪を償おうとするし、全員が全員クレバーな大人なんだよな。
ミシェル・ファイファーが出てきた時点で、「あ、こいつエゴみたいに悪くなってるパターンじゃん」と思ったらそんなことはなかった。ちゃんと大人。

ただこれはディズニー的な配慮が効いたわけではなく、前作からの遺伝子を発展させた部分ではないのかなとも思う。前作でも義理の父親と和解をするようなつくりは非常にオトナな対応だと感じていた。もっといえば、善人だろうと罪を犯したらきちんと罪を償わせるというのは前作を途中で降板した『ベイビー・ドライバー』のエドガー・ライトのミームなのではないだろうか。

シナリオはまあ言ってしまえば独り相撲というか、ただお母さん助けようという話なので、まあ評判が分かれるのもなんとなくわかる。
物語後半でアントマンがピム親子を助けると二人が感謝するけど、いやそもそもこうなったのスコットのせいだよな?とか思って、さらに今回の事件てそもそも全部自分たちが蒔いた種だよな?みたいなことも思ってしまったりはした。
前作で博士が言ってたエセ科学も無かったことになっていて、「空間も時間も存在するじゃねえか!」みたいな疑問もある。
敵もまあすり抜けるっていうのが今回もアントマンたちとかぶる能力だったんだけど、戦闘に関しては前作みたいな絵的な面白さは減った。その代わりに量子世界描写だったり、特殊能力の使い方みたいなところで見所は増えているけれど。

とはいえギャグとかマイケルペーニャのアレとか楽しく観てて劇場も割とあったまってたのに、ラストのアレで涙が止まらなくなり、終わってから誰も一言も喋らずに帰って行ったのが印象的だった。許すまじ。

あとロケーションが去年アメリカ行ってた時のもろ同じ場所だったのでちょっと懐かしかった。西海岸の坂が多いロケーションでのカーチェイスはフレッシュだし、あの海岸のところでカニのシチューみたいなやつ分けあって食べたなーみたいな記憶が蘇ったりした。
おっさんを若者に見せるメイク技術がこれ見よがしで笑ってしまった。
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