Chico

リメンバー・ミーのChicoのレビュー・感想・評価

リメンバー・ミー(2017年製作の映画)
4.3
監督 リー・アンクリッチ
製作 アメリカ(Disney/Pixar)
原題 Coco

メキシコ文化を背景に家族愛と少年の音楽への情熱をカラフルな映像と音楽、巧みなストーリーで描いたハートウォーミングな作品です。
ディズニーらしいマジカルな世界観とPixarのアニメーション技術が融合したパーフェクトなエンターテイメント作品だと思います。CGやアニメーション技術の安定したクオリティもさることながら、特筆すべきは脚本力。パズルのピースをはめていくように、ストーリーは序破急の三幕構成の中でぴったりきれいに収まっていきます。ストーリーに携わったのが総勢25名。三人寄れば文殊の知恵といいますが25名とは(そんなアーティストを集められるのはやはりディズニーだなと思います)

邦題はリメンバー・ミー。覚えていて(忘れないで)。祖先の記憶を繋いでいき、彼らもまた家族を見守り、互いを思い合うことでより一層絆が深まる。このとても抽象的な内容をここまで具現化して(メキシコ人の死生観を表現しているようですが)語り、普遍的な愛の話にできるのがすごいなと思う。
ママ・ココのように、“思い入れのある曲”で過去の記憶が目覚めること、全く何にも反応せずにいた人が、過去を思い出して笑ったり、泣いたりする例は実際にあるようです。(これを題材にしたパーソナルソング(2014年)というドキュメンタリー映画がある)

メキシコの祝祭「死者の日」はアメリカのハロウィンと日本のお盆を足した様な印象を受けましたが、例えばショロ犬は死者の案内役であり、マリーゴールドは死者の花(マリーゴールドの花びらは下界への橋やミゲルが現世に戻るための切り札として、生者(現世)と死者(あの世)をつなぐ象徴的なアイテムとなっていました。)と言う文化的な前知識があればはじめから楽しめたのかなと思います。メキシコの方や文化に親しい方はもっと親近感があっただろうな。

キャラクターもほとんど骸骨だけど皆個性的に描かれおり、ダンテという犬のキャラクターができるまでについての話がボーナスコンテンツに収録されていましたがいろんな意味で興味深いです。アニメーターのこだわりや数々の努力は一度の鑑賞では見落としてしまうような細やかさです。ダンテと言う名前も象徴的。(神曲では主人公ダンテが案内人ウェルギリウスに導かれることを思うと本当はミゲルがダンテだけど)
そして、ぼろぼろの容貌の情けない骸骨のヘクターがエンディングに向かってヒーロー(男前)に変わっていく感じをガエル・ガルシア・ベルナルがとても上手く演じてた。フリーダ・カーロもよかった。(ソウルメイト、ディエゴ・リベラがいないのは気になったけど。)

欲を言うなら、ミゲルと音楽の関わりをもう少し出して欲しかったな。それにエルネストの魂がどうなったのかも。忘れ去られて最後の死を迎えたのか、まだあの世界にいるのか。

Pixarはインサイド・ヘッド以来の鑑賞。ストーリーに惹かれていてずっと観ようとおもってたけど人物のフル3D描写が苦手なので後回しにしてました。
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