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リメンバー・ミーのsiaのレビュー・感想・評価

リメンバー・ミー(2017年製作の映画)
3.8
ディズニー・ピクサー映画の一番の魅力は、これまで誰も見たことがなかったようなユニークな世界を見せてくれることだと思います。
おもちゃだったり魚だったり車だったり頭の中だったり、よく考えつくなあと感心させられるような斬新な題材で楽しい物語を生み出してくれます。

そして本作でも、期待通りの奇妙で面白い世界を見ることができました。

死というこれまでにない重いテーマを、湿っぽくないライトなトーンで描いています。
作中で登場する「死者の日」はメキシコに実在する文化だそうですが、全編通して漂うラテンアメリカ的な雰囲気も独特で興味深いです。

そしてなによりも映像が美しいです。
鮮やかで色彩豊かな死者の国は見ているだけで楽しく、このためだけにでもこの映画を鑑賞する価値があると感じました。

ただ、映像面では素晴らしい部分が多かったのですが、ストーリー面では弱いと思った部分も多かったです。

特に、ディズニー・ピクサー特有の、未知の世界を大冒険するというあの高揚感があまり感じられませんでした。

死者の国というこれまでにないぐらい壮大な世界観でありながら、物事はすべて一つの街の中だけで繰り広げられます。そのため、全体的にストーリーがかなりこじんまりとした印象を受けました。

また、映画の本筋は主人公のミゲルがなんとかして元の世界に帰ろうとするという話なのですが、実はある「条件」を呑みさえすれば簡単に帰ることができます。
もちろん、ミゲルはその条件を呑みたくないので別な手段を見つけるために頑張るわけですが、やはり無事に元の世界に戻れるのかどうかという緊張感には欠けます。
一応日の出というタイムリミットが設けられているものの、作中で時間経過がそれほど示されないのでハラハラ感もあまりないです。

相棒のヘクターも個性的なキャラクターではありますが、ミゲルと一緒にいる時間は全体で見ると意外と短く、一緒に行動する必然性も薄いです。
なので、ふたりの友情が強まっていく過程も少し描写不足に感じました。


と、終盤まではピクサー映画にしては少し物足りないなと思いながら観ていました。

しかし、この映画の最大の見どころはラストシーンです。
こういう展開には弱いので、正直最後はかなり感動させられてしまいました。
音楽が非常に効果的に使われており、そこまでの積み重ねがしっかり活かされています。
日本語版のエンディングもすごく良かったです。

しかしこうして見終わってみると、原題はかなり思い切ったというか、こんな露骨で大丈夫なのかってくらいストレートなタイトルですね。
もちろん、邦題の『リメンバー・ミー』も劇中歌や「思い出」というテーマに寄り添った良いタイトルだと思います。

あんまり「泣ける映画」みたいなことを言ってこれから観る人のハードルを上げたくないのですが、少なくとも個人的には久々に泣かされた映画でした。
不満点もありますが映像・音楽ともに素晴らしく、多くの人が楽しめる作品だと思います。

さっそくサントラ聴こうかな。
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