イェスタデイワンスモア

Cowspiracy: サステイナビリティ(持続可能性)の秘密のイェスタデイワンスモアのネタバレレビュー・内容・結末

3.1

このレビューはネタバレを含みます

Technique:
映画の構成は巧妙かつ革新的か?観ていて面白い映画か?特筆すべき映画美術の質と革新性はあるか?
→ 0.8/1.5
一人称で調査旅行に出るタイプの普通のドキュメンタリー。芋づる式にトピックを見てゆくのだが、監督のエゴも全開の作りになってる。


Narrative:
意外な結論があるか?価値ある感情的インパクトを残すか?伏線設計などは緻密か?
→ 0.9/1.5
ヴィーガンになりましょうという話。

ヴィーガンを宣伝するためにこの映画を作ったのか、それとも本当に映画に描かれているように調査の過程でヴィーガンが良いと気づいたのかで、映画の信頼度が大きく変わる。そしてその真偽は映画だけでは分からない。

産業と政府の結びつきが強い畜産業界に、根気強く批判的な姿勢で挑んだのは素晴らしいと思う。一方で、環境保護を掲げてこの映画のプロデューサーを務めたディカプリオは、プライベートジェットを乗り回し(今は知らないけど少なくとも以前は)、深刻な環境汚染を起こしている、上位1%の人生を謳歌していることなどに触れていない。

カモを殺す農家のシーンでは違和感を覚えた。結局、動物は可愛いもの、人間が愛でるものという「人間優位」なコンセプションが全面に押し出されていた印象を受けた。カーボンフットプリント的に効率が悪いのは分かったが、「可愛そうだから殺せない」というのは甘えのように聞こえた。そう言っている間にも、貴方が着ているTシャツを安価で作ったバングラディシュの労働者は貧困で死に、インドの綿花農家は自殺をしている。(『The True Cost』参照)。その人たちが買える唯一の栄養源が、大量生産されている肉の場合、あなたは動物を選ぶか人間を選ぶか?

物事の複雑性を受け入れ、相互矛盾の中で最適解を求めるという姿勢が少し弱いと感じた。

ヴィーガンの人も、タンパク源を獲得するために、サプリメントを日常的に使用するが、それを作る過程のカーボンフットプリントや健康リスクのアセスメントはちゃんとしているのか?まだ未発見の人間に必要な栄養源が肉に入っていて、ヴィーガン生活はそれを知らずに損なっている可能性はないか?ヴィーガンの人にとって、自然はそんなに「理解可能」なものなのか?

僕は、畜産業の絶対量を減らすことには大賛成である。一方でヴィーガンだけを唯一の解とし、自らに批判のメスを入れないようにする姿勢には、まだ批判的になってしまう。(自分の姿勢を変えることにはオープンでいたいので、あくまで現時点で。公開する日も来るかもしれないが...)


Positionality
映画は新しい視点や知見を提供するものか?有効な問題解決策は提示されているか?公開当時と現在にどのような意味を持つか?
→1.2/1.5
・カーボンフットプリントの計算方法は、主人公が実践していたように、常に頭に入れておいて良いと思った。

・アメリカやブラジルなどの多くの国にとって、畜産は基幹産業の一つであり、環境団体はそれらに踏み込めない現状について学べた。アメリカが、TPP交渉などの際に日本に異常な量の牛肉を売り込もうとする背景が垣間見えた。ブラジルでのシスター殺人事件は衝撃だった。

・環境問題は、さまざまな意見があり、正義の名の下に行える所業なのでエゴがぶつかり合いやすい。この種の映画で描かれる解決法は、その複雑性に正面から向き合わず、シンプル化し過ぎている気がする。『ドント・ルック・アップ』のように、なんか、こんなんしてたら環境問題解決は間に合わなさそうだなと思ってしまった。

Bonus
→0.1/0.5
これだけ産業からプレッシャーかかってるのに、ディカプリオとNetflixと協力することで、広くこの問題が認知されるまでに至ったことは価値のあることだなと思う。