にねこ

キングコング:髑髏島の巨神のにねこのレビュー・感想・評価

3.4
基本的には非常に古典的な物語で、アホっぽく要約してしまえば「お家に帰りたい(帰したい)」という話(さらに言えば「それぞれに家はあり、それは各々にとって大事」という話であり、ベトナム戦争への批判になっているわけだが)。
おおよそヒーロー的立ち位置と言える元イギリス軍のやとわれ傭兵のみ帰る家がない存在として描かれているが、それはジョン・ウェインを持ち出すことによって明示されており、ああアメリカ映画だなと思って笑ってしまった。
評価が微妙なのはカメラマン(ないし、カメラという装置)で、コング登場シーンでコングの全貌を捉えられないものでありながらも、原住民のカモフラージュを見破るのはカメラを通した眼差しだった(まあつまり、裸眼の視線とは違ったフレームを提供するものとしてはまあまあ上手く使われている)というのはよかったのですが、原住民との邂逅のシーンで銃をおろした瞬間にパシャッとシャッターを切るなどのシーンは、近代兵器の無力を散々見せつける割にカメラの暴力性みたいなものにあまりにも無自覚で、些か感心できない。というか、ソンタグが見たら怒りそう。こういうところも含め、冒頭で「この世界で一番賢いのは人間でも猿でもなく機械だ」みたいなセリフがあった気がしますが、あんまりテクノロジーという問題系は活かされていなかった気もしますね。衛星が人間の眼差しを超えて世界を捉えられるようになったから未開の地を見つけたってだけでは。
とはいえ、全体を通してスペクタクルとして飽きさせない良作でした。余談ですが、前人未到の島に衛星写真の情報のみで足を踏み入れるのに「帰還のチャンスは三日後に1度だけ」とはずさんにもほどがあるなとか、あんな未知の生物まみれの島で怪我しまくりなのに「私達は秘密を漏らさない」と言われても感染症を発症したりしたらどうするんだろうとか、ビミョーなツッコミどころが多数あるのもよかったです。
にねこ

にねこ