Yui

葛城事件のYuiのレビュー・感想・評価

葛城事件(2016年製作の映画)
3.7
抑圧的で思いが強い父親、長男はリストラされて孤立、妻は精神を病む。そして次男は無差別殺傷事件を起こし死刑囚に。そこに死刑反対の女性が現れ、死刑囚の次男と獄中結婚。こんな救いのない結論に至った原因はどこにあったのか?壮絶な、ある家族の物語。

池田付属小の宅間守事件とその家族がモデルです。宅間守事件を描いている訳ではないので、内容は異なりますが…そういった面でも、色々と配慮は必要になってくるよねと思ったり。


絶対にこの家族の一員にはなりたくないけど、
めちゃくちゃ普通にいそうな家族…
蓋を開けたら闇が深くてやばかった的な。
普通に見えるのに、普段から、不協和音が凄すぎる。下手くそでキーキー鳴るバイオリンを聞かされているような不快感。

胸くそ映画と言ってしまえばそうなんだけど、
俳優陣の演技が巧みだったので、
最後まで引き込まれてしまった。

父、三浦友和の不快さよ。
普段の三浦友和から感じる温かさや包容力の欠片もないような高圧的で自己中な父。自分が感じて来たコンプレックスを子供には同じ思いをさせたくないと思うのが親心なんだろうけど、傲慢で、こんな親は息が詰まる。私なら一目散に家を出るな…。

南果歩演じる母も、そんな夫に不満で…ってなるんだけど、依存体質なのかな…そして行き過ぎた過保護、そんな南果歩も観ていてほんと疲れた。長男、新井浩文が家族の中では一番まともだったのかなと思うけど、演技が絶妙で良い。とにかく親からのプレッシャーが強すぎて不憫なんだけど、奥さんがもっと不憫。

次男、若葉竜也がいや~もう!めちゃくちゃ腹立つけどいそう。リアル。講釈ばかり並べて何もしない、何も出来ない。でも自分は正しいと真面目に思っている。いるんだろうなこういう人。もう、全員いるんだろうなこういう人、だった。

肝は田中麗奈でしたね。正直、一番ゾッとするし、イラッとするタイプの人間でしたが…いるんだろうなこういう人も。(それしか言ってない笑)死刑反対なのは個人の自由なので良いとして、死刑囚を救いたい善人な自分に酔っているだけで、葛城家族や目の前の人の事を何も考えていないし、致命的なのはその事に自分で全く気付いてないという事。やらない善よりやる偽善とはいうけれど、これは全く違う話だなと思う。登場人物1、2を争うクズさ。ヤバいです。



家族って…と何度も頭に過ぎった本作。
幸せな家族の為に父親がしてきた事は、
自分の理想とする家族の為に、
自分だけが満足する事ばかり。
周りが見えていないし、気持ちを考えないからこんな事になってしまったんだろうか…。要因の一つではあると思うけど、父親だけが悪いとも一概には言えない難しさもあった。でも、子供は親を選べないし、家族って選べないから…。やはり両親の責任は重い。

何を言った所で、
「俺が一体、何をした。」
ってなりそうな所も怖い。
少しづつ狂ったのではなく、元からだいぶズレてたんだろうな。私は、この父親がどんな家族の元で育ったのかがとても気になった。

家族は作れるし、家族は壊せる。
家族主義が間違っているとは思わないし、
自分の家族は好きだけど、
家族に囚われ過ぎるのは怖い。


2022-220
Yui

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