けんけん3号

葛城事件のけんけん3号のレビュー・感想・評価

葛城事件(2016年製作の映画)
3.7
ちょっと前の作品だが、気になっていた本作をようやく鑑賞。気分が落ち込む作品だった。嫌な人間を見させられた。それにしても、葛城清の目標はなんだったのだろう?なんのために家庭を持ったのか?普通の人は恋に落ち、お互いに愛し合い、愛の結晶として子供を持つ。そして親となり、家族となり、子供の幸せを願う。葛城清もそうだったのだろう?いやぁ、そうだったのかなぁ?葛城清なりの理想はあったのだろうが、どうして愛おしいはずの家族を抑圧したのだろう?抑圧しているつもりはなかったのだろうか?抑圧されている側は、自分でも気付かないうちに抑圧されないように生きるようになる。その抑圧が毎日続き、本当の自分を出せなくなり、おかしくなってしまう。見かけでは分からないが、人格、精神、心が病んでしまう。葛城清の中華屋でのクレームがいい例。あの常識の通じない、結論にたどり着けないクレーム。極端に言えば意味のないクレーム。あの理屈で日常生活に介入され続けたら…。それはかなりの罪。この家族の生き様はまさに地獄。だから稔も罪を犯すような人間になったのだろう。結局、稔の言い分も葛城清に似てしまっている。まさに家族としては悲劇の末路。なかなか複雑な気持ちにさせるし、考えさせられる作品だった。個人的には獄中結婚の話は要らないから、葛城清が何故そういう人間に変わったのかを描いて欲しかったかな?獄中結婚をする例はあるだろうが、この作品でのそれは意味のないように思えてしまった。大体、星野順子の死刑廃止論が矛盾していて理解が出来なかった。獄中結婚のくだりがなかったらもっといい作品になったと感じてしまった。しかし、葛城家の面々の演技が凄すぎた。特に三浦友和は圧巻だった。