ビョーキノオタク

葛城事件のビョーキノオタクのレビュー・感想・評価

葛城事件(2016年製作の映画)
3.0
田中麗奈演じる順子が突然の赤裸々性体験告白タイムで理解が追いつかなかったが、「嫌な記憶があっても人は生きていける」ということを言いたかったのね。

だから父親も、死のうと思ったけど死ねなくて、最後は生きる=食事することを選んだ。

息子のミノルの言う通りで、父親は、そのまた親から受け継いだ金物店で働いている。劇中では客は1人も来ない。
だのに家を買った、家庭を持ったと言うだけで傲岸不遜となり、家族や他人を暴力でコントロールしているドブカスヤロー。

この父親、「それが日本人の悪いところだ〜」なんて言っておきながら、就職しないでいる息子にだけ暴力をふるったり、自分こそ世間体を気にしているダブスタクソ親父。
もう一人劇中に出てくる、タモツの上司も、「営業とはなんだ、言ってみろ!」という問いに「コミュニケーション」と答えたタモツを叱責した直後に、「いいか?営業ってのはコミュニケーションなんだぞ!」と主張したり、みんな二枚舌😭

そして家の中が暗い!!
いや、空気が、じゃなくて、照明的な意味で!!
そして4人で住むには狭い!!!!

この閉塞感が終始ピリピリした不快感があって良かった。

お父さんの亭主関白、自己中なところや、
就職できない劣等感を他者のせいにしている次男も、
自分の意見を殺して我慢して、心をすりつぶしているお母さんや長男も、

映画だから誇張されてるとはいえ、誰しもがこういった一面を持っているだろう。

途中、幸せな頃の家庭の様子が映し出されるけど、その映像は明るいから、
ほんとにちょっとしたことで家庭が崩壊することの暗喩なんだろうなあ。
お父さんが首を吊ろうとした木も、新築で家を建てて希望に溢れていた頃に植えた木というのがしんどい。。。


「冷たい熱帯魚」を引き合いに出されることがある作品みたいだけど、確かに見た後はドッと疲れたな。
面白かったけど、記憶が残っているうちはもう観たくない映画だ(褒め言葉)