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葛城事件のいいんちょのレビュー・感想・評価

葛城事件(2016年製作の映画)
3.8
いい意味で後味が悪い映画(なんのこっちゃ)。
あらすじだけ追えば、東野圭吾の『手紙』みたいな加害者家族が味わう差別や偏見の話だと思ってたけど、実際はちがう。
「僕たちは話が通じているようで、実は通じていないんじゃないか」というもっと普遍的な、根の深い問題に迫っている。
「話が通じない」場面はいくつもあるけれど、笑っちゃったのはお父さんが中華屋で切れるシーンで、「そういうことを言ってるんじゃないんだよ!」と言いながら、全然話の核心が見えてこず、何に怒っているのかさっぱりわからないところ。
劇中で一番健気に頑張っていたのは、死刑廃止論者を演じた田中麗奈だけど、彼女も最後に本当に最低最悪のしっぺ返しを食らう。彼女の話も彼にはまるで通じていなかったわけだ。
お父さんが最後のシーンで、誰もいないマイホームで、家族の名前を呼びかけても当たり前だが誰も返事をしない。彼は庇いようのないクズなように思えるけど、一方で彼は彼でかわいそうに思えてくる。きっと彼もどこで自分が間違ったかをわからないだろう。「話が通じていない」のはたぶん最初からだし、どこで間違えたというなら「最初から全部」なのだろうから。
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