玉葱

葛城事件の玉葱のレビュー・感想・評価

葛城事件(2016年製作の映画)
5.0
※ネタばれ

希望を一切描かないが、それがこの家族の現実であり、そこに忠実である作品自体に誠実さを覚えた。
ここまでひたすらに完成された地獄を作り上げることができることが、僕には希望に思えた。舞台挨拶で赤堀さんは「この映画は、(は?って言われれるけど、)希望の映画だと思ってます」と言ってた。

自分の家族を思い出して、懐かしいなぁと思いながら見てた。
なにしろ、三浦友和さんが父親にそっくりで。普段は素敵な俳優さんが、うちの父親をこんなに見事に演じてくれて、嬉しかった。

一番くるシーンは、最後のシーン。
我が城だと豪語していたマイホームを破壊していくシーン。
ライターがつかなくなって、清が自分を支えていた理想が完璧に壊される。家具や置物を一つずつ、流れるように壊して、投げて、目に入った掃除機の電源コードを引っ張って、子供たちが健康に育つことを祈願して植えたみかんの木へ向かう。
ラストのラスト、食事に戻るところが、この映画の救われなさの最高潮だと思う。それを観た時、美しいと感じてしまった。
たぶん、人間だと思ったからだと思う。
誇張もしなければフィクションでもない、現実の等身大の人間。

舞台挨拶を検索したり、インタビューを読んだり、作品を観た後に作り手のことが気になった。普段の三浦さんを見て、安心した。
玉葱

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