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ミューズ・アカデミーのayのレビュー・感想・評価

ミューズ・アカデミー(2015年製作の映画)
3.0
バルセロナ大学哲学科で教鞭をとるラファエル・ピント教授の講義「ミューズ論」は、ダンテ「神曲」の女神の役割についての問いかけを入り口に、白熱。教授の私生活や受講生同士のおしゃべりや旅先の会話のなかでも、議論が続く。

愛は人に過剰に課題を抱かせる、恋愛は文学の発明、法は欲望や情熱を恐れる、みたいなことばが一瞬聞こえてきて、でもそれらの意味が個別に掘り下げられることはなくて、ことばがばらばらに宙に散っていく。

ピント教授の実際の授業の様子を撮影したシーンからはじまって、ドキュメンタリーなのかフィクションなのかはっきりしない。プロの役者じゃなくてリアルな立場の人たちをそのまま映してるはずなのだけれど、すべてはファンタジーにみえる。男性も女性もみな饒舌で、ただ同じ空間に一緒にいてもどこかよそよそしくて、噛みあわない会話を延々と続けていて、愛についての議論に到達点はなかった。

教室外でのショットの、透きとおったガラス越しの反射を使った映像の遊びは、虚構のような現実にさらに淡いフィルターをかけて、その場から現実味をすっかりなくしてしまおうとするみたいだった。愛の哲学の核心に迫ることをむしろ避けるための逃げ場として"高尚"な議論の場があるかのようで、何もかもがクリアになることはなくて、みる前の想像とは違って皮肉含みの実験作だった。 
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