ゴードン医師

ハッピーエンドのゴードン医師のネタバレレビュー・内容・結末

ハッピーエンド(2017年製作の映画)
3.8

このレビューはネタバレを含みます

現代(ポストモダン)をテーマにあらゆるひとが問題を抱えてることを描いたフランスの作品
タイトルは皮肉でハッピーエンドにならないどころか、ハッピーエンドを想像することが全くできない虚しい現実を暗示しているのでしょう
じいさんは妻を失って生きる意味がなくなったにもかかわらず、家族のなかでやっていくことを強いられる。妻との経験からこの先の人生に全く意味がないと知りながら、自分のことしか考えていない子供達を愛することもできず、死を待つ。
お父さんは浮気が娘にバレてもなお愛人との関係を割り切ることはできないでいる。妻への愛は日常に薄れ、肉体的な意味でしか繋がらない愛人ともうまくいくはずもなく、いずれにしても円満な家庭を築くことはもうできない。
おばさんは自分と会社の利益しか考えてなく、家族の体裁を保とうとするもこのまま家族がこじれていくのを見いるしかない
おばさんの息子は母の醜さに反感を持つが自分ではなにもできないし、発言権もないことを知っている。無力ながらも映画終盤のパーティーをめちゃくちゃにしたシーンは劣等感と虚しさに蝕まれているが、プライド高い現代の若者を思わせる。
少女は作者が提示しようとしている核心の新世代だと思う。他人への無関心がいままでになく無限大に発散している。現代社会のメディア文化の影響を強く受け、残忍なことを残忍だと認識しない。従来の道徳観がなくなり、命に対する認識もいままでのひととは明らかに違う。
作者の個人主義で自由主義の現代に対する懸念であり予想だろう。
お父さんの妻は作中で唯一のまともな人間だと思われた。まともな人間の役として、どうすることもできないこともあると言いたいのかもしれない。もはや一人ではどうにかしてできる問題ではなくなっている。

作を通して信仰も信念も信条もないポストモダンの問題点が浮かびあがる。全員が加害者で被害者。
中世は宗教または王への忠誠、近代は愛国や革命などのイデオロギーが人々を支配していた。21世紀に入りそれらがなくなったあとの人間の形をこれ以上なくリアルに剥き出した秀作であった。
ゴードン医師

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