内容も良いけれど、絵のエクスタシーを感じる映画。低予算なのに未来感を出すロケ地や車、美術のセンスがずば抜けて洗練されているし、登場人物を少なく成立させた脚本といい、研ぎ澄まされたクリエイティブの鏡のような作品。公開時以来久しぶりに観たけれど古さを感じさせなかった。
ただ絵を優先させ感情を殺していたため、情緒の共感がラストシーンまで抑えられてしまったことで、主人公の不正行為が肯定できない冷たさを感じてしまうし、主役二人の恋愛も空疎にしか感じられなかったところが残念。しかし主人公は友の髪の毛を持ち運命を共にした彼と一緒に宇宙に旅立ち、友は挫折の銀メダルが自殺の炎の光で金メダルに輝きながら最後を迎え、検査官の願いを込めた不正見逃しが救いとなって、最後にギリ人間味を感じさせてくれる。
