おにっく

ガタカのおにっくのネタバレレビュー・内容・結末

ガタカ(1997年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

1997年作のため、この時代で未来を描く作品であることから、リアルタイムで見ていないとどうしても出てくる機材のデザインが古臭く陳腐に見えてしまう。

しかし、それであってもとても良い映画です。
胸が苦しくなるようなシーンばかりで大変ですが。

昨今科学系ニュースではいろんな遺伝子が見つかっているので、この映画のようにデザイナーベイビーが実現するのもすぐそこまで来ているのかもしれません。

デザイナーベイビーであれば、身体能力・知力に優れ、病気疾患とは無縁の完全無欠の人になるかと思いきや、それだけではない、人生には運という要素もある。

そして、身体能力は凡人以下でさらには心臓疾患を抱えている兄が、デザイナーベイビーの完璧な弟に海の遠泳レースで打ち勝てるというところを冒頭から出しているところには、生まれ持っての才能以外にも、諦めず希望を持ち続けることが重要だということがわかります。

希望、かけらでもそれを胸にしていれば、いずれ道が開けてくる。
そんな生きるために必要なことを教えてくれるものでした。

そして、ドキドキハラハラのシーン。
随所にDNA検査装置がしかけられており、偽ってその装置をギリギリのラインで回避し続けるシーン。

さらには殺人の疑いをかけられて逃げ回るシーン。
特にカラーコンタクトを外し、弱視で周りがぼやけて見えないのにも関わらず、健常者を装って高速で車が走り抜ける車道を横切るシーン。
これは怖くて息がつけませんでした。
5.1chで見ると前後から車の音が聞こえ、より緊迫が味わえました。

きっと当時の映画館で見るよりも恐ろしかったんじゃないかと思います。

また、そんなハラハラのシーン以外にも重要なのが主人公の協力者。

遺伝子をデザインして完璧だったはずの彼も運命だけはどうしようもなかった。
不運による怪我、自殺未遂を図って半身不随となってしまった男、ユージーン。
しかし、過去のプライドを象徴とする銀メダルが映るシーンはその背景もあって何とも言えない気持ちにさせます。

そんな彼が、アリバイのために階段を上半身だけで階段を登るシーン。
どうしてユージーンは主人公のために、あそこまでするのだろうかと考えました。

だって、お金をもらってDNA判定回避の血液を売るだけの関係なわけですから、そこまでする義理もなかったとも思います。
DNAを提供することでメリットが有るのは主人公だけ。
ユージーンへの報酬もたったの2割程度。

それなのにあそこまで彼を突き動かしたのはなんだろう?と考えてしまいました。

金銭以外には友情がある間柄ではないし、知り合ってから日も浅い。
そして捕まったとしてもユージーンは主人公ほど重罪になる話はない。

でも、夜寝る前ふとあるシーンが思い出されました。
主人公とユージーンがワインを飲みながら土星について語るシーンがあります。

雲に覆われ外からは見えない正体不明の星。
しかしこの星は重力が少ないから歩く必要がない、君こそが行く星だ。

そう語るところで、主人公に対しユージーンは胸を打たれたのか。
冗談を言いつつも、その星の夢に思いを馳せることになったのでしょうか。

だからこそ、あのように執念で階段を登ることができたんじゃないかと思います。

あとは、最後はDNA検査士の粋なはからいが小気味よかった。
そして、託した髪の束。

プライドの高い彼だからこそ選択した決断だったのだと思います。


古い映画だったけど、没入感も高くそれぞれのキャラクターの意志と感情に打たれる良い映画でした。