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アズミ・ハルコは行方不明のNinicoのレビュー・感想・評価

アズミ・ハルコは行方不明(2016年製作の映画)
3.1
原作読後すぐに映画化を知り、やっと観ることができた。
ジェンダー論を極めて身近なモチーフで描いた小説という印象を持っていたが、
この映画はあれこれと映画的試みを詰め込み過ぎてやや散漫な印象。しかしながら原作を踏まえて観るなら、ある意味で完全に別物として成立してはいるし、決して稚拙な映画とは言えない魅力を持っているので、個人的に嫌いではないという感想が多いのも納得。

地方在住のマイルドヤンキー達の日常のディテールはあまりにも鮮やかに描かれているし、小説ではイマイチ具体的に輪郭をつかみきれなかったアイナは実に活き活きと、見たことありそうなつまらなくて可愛いビッチとして輝いていた。

小説で印象的だった映画館でのJK狂乱暴動シーンは、なんだか昔のエイフェックスツインのPVのようで、これは映画全体に言えることなのだけど細かい演出が非常に前時代サブカル知識人風なところがあり、この作品の登場人物達のストーリーと時代背景と映画演出の時代感が見事にすれ違っている点が、この作品の不思議な印象を決定付けているのかもしれない。

もう一度観たいとは思わないが、こういう奇怪な前衛映画をポップにしたような映画は、若いうちに観ておくのは決して悪い経験にはならないだろうなと思った。
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