糸くず

ジャック・リーチャー NEVER GO BACKの糸くずのレビュー・感想・評価

3.9
ジェームズ・マンゴールドと共に「一貫性のないフィルモグラフィーを持つ監督」として名高いエドワード・ズウィック先生が『アウトロー』の続編をやると聞いて、期待半分不安半分で楽しみにしていたわけだけども、蓋を開けてみると、とにかくカッコいいトム・クルーズがカッコよく敵をボコボコにする「普通」のアクション映画になっていて、ニヤニヤが抑えられなかった。

同じバスを使っての逃亡でも、クリストファー・マッカリーのすっとぼけたユーモアは完全に失われ、よくあるワンシーンに収まっていたわけで、それを惜しむ気持ちもわからないでもないけども、その代わりに「カッコいい放浪者が、ヒロインと友達以上恋人未満の関係を築きながらも、結局は別れ、旅を続ける」という型が完成されたのであって、つまりトム・クルーズ版『男はつらいよ』として長く続けられることが証明されたのである。

今回の「マドンナ」であるコビー・スマルダースは、「ヒロイン」というより「相棒」の肩書きが相応しいクール・ビューティーで、キスシーンどころか手を握ることさえしない。この映画に限らず、エミリー・ブラント、レベッカ・ファーガソンと、最近のトム・クルーズが選ぶヒロインは皆笑顔よりも眉間に皺を寄せている顔が似合うクール・ビューティーたちであり、今度の『ミイラ再生』(というか、『ハムナプトラ』)のリブートでは、ソフィア・ブテラと共演するようだから、ズウィック先生とは違って、トム・クルーズの好みには一貫性があるようだ。

ところで、Filmarksのこの映画のデータは重大な事実が抜け落ちているので、皆さんにお伝えしたい。それは、脚本にリチャード・ウェンクが参加していることである。そう、『16ブロック』『イコライザー』のリチャード・ウェンクである。この映画は擬似家族の物語であるが、『イコライザー』も超絶殺人マシーンの「パパ」が突然現れた「娘」を助ける擬似家族の物語だった。ウェットとバイオレンスのバランスが絶妙なウェンク節が堪能できることも、わたしがこの映画にニヤニヤしてしまう理由なのである。
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