YokoGoto

ケンとカズのYokoGotoのレビュー・感想・評価

ケンとカズ(2015年製作の映画)
3.6
<男性評と女性評では、ちょっと違うかも>

2016年は邦画の当たり年と言われ、ジャンル問わず、様々な邦画が注目された。本作『ケンとカズ』も映画ファンの間では話題になっていたし、Filmarksの評価も非常に高い。
邦画ノワール色が全面に出た作品であり、そこに、監督のフレッシュな感性も加わり、とても個性のある作品にしあがっている。

昨年のキネマ旬報社の邦画ベストテンのランキングにもランキングされた、柳楽優弥主演の『ディストラクションベイビーズ』などにもあるように、この作品もまた、リアルな暴力が作品のテーマの中心に走っていて、暴力を否定するために、あえて暴力を真正面から描くという映画である。

ただ、本作『ケンとカズ』は、ヤクザが絡むドラッグ売買がテーマになっているので、結構シャレにならない。

闇社会とのボーダーラインを行き来している主人公達の、葛藤や苦しみ、哀しみを、生気のない表情だけで綴っているあたりは、とてもリアルで、観るものが感情移入しやすいであろう。


そして、ここからは、私個人的な感想。

恐らく、恐らくだが、、、、本作は男性評と女性評では、ちょっと異なるのではないかな?という感想を持った。
男性評としては、多くが肯定的な感想を持つだろう。
暗闇から血を流しながら這い上がる感じ。
男性なら、誰でも共感できるノワール感は共感しやすい。

ただ、女性目線でみると、なかなか理解しがたい部分も多いのが正直な感想。(正直、シャレにならないし、付き合いきれないし、彼らを愛せるものだろうか?と冷静に観てしまう)
描き方が、もうちょっと違ったらそうじゃないかもしれない。

法に触れる世界で生きる生き様には、どうしても一線を引いて観てしまう自分がいた。理解しがたいというか、理解できないというのが、正直な感想。
これが、(職業としての)ヤクザ映画の方が、むしろ受け入れられる。

闇社会とのボーダー。
このあたりが、何とも言えずモヤモヤしたところであった。

また、冒頭の5分くらいは、編集と音楽の使い方がヨーロッパ映画風で、とても良い感じだった。『フレッシュだな』と感じるテイストだったのだが、後半にかけて、だんだん普通になっていったのと、若干、音楽が邪魔になったシーンも多かった。(すみません、正直すぎて。笑)

暴力シーンは、編集などで上手く見せているのだが、カメラがブレブレ動きすぎる編集は、肝心な所は見えないという手法なので、暴力が過激すぎるという印象はあまり感じられない。(このあたりは、『ディストラクションベイビーズ』の方が過激)

あと、何よりも、ケンとカズの2人の関係の由来を細かく描写しなかった事が、吉とでたか、凶とでたかが微妙だった。
ラストに向かっていくにしたがって、2人がどんなつながり方をしていたかは、想像できるのだが、全編通して過去をほとんど語らなかったため、今ひとつ感情移入しずらい。

過去を語っていないという点は、前述したように、闇社会とのボーダーを生きる彼らの生き様の根本が見えてこないため、感情移入でしづらいという所にもつながる。

『想像してね』パターンだったのだが、果たして、結末だけで、どこまで想像できるかが微妙。特に、ケンに関しては、ほとんど人物描写が無いため、彼のアイデンティティの深掘りできない。役者の表情で想像するしかないのだが、それも難しい。もうちょっと、そのあたりが分かる演出がある方が好みである。

最後に演技面。
メジャーどころの俳優ではないため、全体的にとても良い。
余計なノイズが入らないし、純粋に彼らの生き様に思いを馳せることができる。ラスト付近の演技は特に良い。
一番良かったのはヤクザ役のトウドウさん。すごい良いなと思った。

個人的な感想は、若干ネガティブな事も入ってしまっていますが、総括すると『この監督は今後もいい映画を撮るだろうな』と感じられる勢いのある作品でした!ということを最後に言いたい。(笑)
YokoGoto

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