申し遅れましたが、私、映画においての食べるシーン専門家でございます。
そんな専門家視点から言わせてもらいますと、本作は食べることにすごく意味を持たせて描いております。
あらすじは崖から身を投げてしてしまった親友が残した1枚の絵に描かれた女性を見つけにいくロードムービー。
死から1年。
表向きは明るく振る舞っていても、親友の死を溜飲できない主人公(大賀)。
きっと主人公にとっての親友の死は、大きな塊みたいな異物で、頭の横にいつも浮いてる。普段は見ないようにしてて、たまに目について悲しくなったりしている。
その大きな塊を飲み込むシーンがあるんだけど、言うことなしの名シーン。名演技。
涙の味を喉の奥に感じながら食事をしたことがある人にはあの感じを思い出すに違いない。
思い返すと、それまでの主人公に食べるシーンがないのだ。
銭湯帰りにコーヒー牛乳を飲んだり、缶コーヒーを飲んでたりはするけど、食べはしない。
職場の先輩との食事シーンも、大賀くんはボンヤリしていて咀嚼をしていない。
しかしその塊を飲み込んだ後の大賀くんは食べる、食べる。
食べることは生きること。
彼は生きることにしたんだ。
この食べるシーンを見るだけでも見応えあり。