フジタジュンコ

バジュランギおじさんと、小さな迷子のフジタジュンコのレビュー・感想・評価

5.0
★★
2024/05/12@イオンシネマ市川妙典

1回目はDVD鑑賞で、このロケーションの素晴らしさをスクリーンで見たかったなと思っていたのですが、このたびリバイバル上映で念願が叶いました!!

冒頭のカシミールの山岳地帯の美しさに早くも涙したほど。インド映画は2回目からが本番なのかもしれない。展開や前提を把握しているからか、劇場鑑賞のせいか、集中して見られたのもあって、より楽しめました。


こんな「泣け!さあ泣け!」っていうスローモーションのシーンを初めて見ました。泣きました。

三大カーンのひとり、サルマーン・カーン主演作。酔っ払って車で人を轢いた事故の悪評を払拭するために、愚鈍で、純粋で、バカがつくほど正直で、ハヌマーン神をひたすらに信じるおじさんにキャスティングされたようだが、その思惑が功を奏しているくらいにハマっている(飲酒運転、ダメ、絶対!)。

パワンが初登場シーンからずっと彼の信じるハヌマーン神の表象でもあることがわかると、また別の感動を覚える。ハヌマーンは顔が猿、体が人で、動物と人間の中間に位置し、『ラーマーヤナ』ではラーマの妃シータを救出するために海を越えたというエピソードがある。このハヌマーンを信じるバジュランギおじさんは、みごとな体躯と人を軽々と投げ飛ばせる怪力、拷問にもへこたれない強い心をもち、ことばを越え、国境を越え、インドとパキスタンの確執を越える。先日見たアミール・カーンの「PK」で描かれていた「神」はどこにいるのか、という強大で困難な問いを、はからずも彼が答えてくれていた。神は心の中にいる。

ロードムービーとしてはパキスタンやインドの景色が美しすぎたので、劇場で見たかったな。音楽も挿入歌もダンスも素晴らしく良いし、私の好きなナワーズッディーン・シッディーキーさんも主要キャラクターとしてしっかり活躍してくれていた(「憎しみではなく愛を!」のメッセージもわざとらしいくらいに感動的)ので満点です。