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バジュランギおじさんと、小さな迷子のKUBOのレビュー・感想・評価

4.4
1月4本目の試写会は「バジュランギおじさんと、小さな迷子」。

インド映画って、おもしろいな〜。159分という長尺ではあるが、またまた長さは全く感じない、大河ドラマを見終わったような大いなる感慨があった。

パキスタンの山間部に住むかわいい、かわいい、女の子シャヒーダー。シャヒーダーは口がきけません。での目を離すとすぐにどっかに行っちゃうから、さあたいへん! 母とはぐれて迷子になってインド側に来てしまった!

そこにばったり居合わせたのが、信心深く、嘘がつけないバジュランギ。シャヒーダーを親の元に返すため、パスポートもビザもないのにパキスタンを目指す! 果たして…

冒頭は結構思いっきりボリウッド。大人数での歌と踊りは、いかにもインド映画。ミュージカルというわけではないのに、突然劇の途中で音楽がかかるといきなり歌い出し、みんなが踊り出すこの熱気は、日本映画全盛期の植木等の映画なんかにも通じるものがあるな〜。

そういえば、主人公バジュランギを演じるサルマン・カーンって、ジョージ・クルーニーと加山雄三を足して2で割ったような濃い〜い顔した日本だと古いタイプのイケメン(?)

まず改めて感じさせられたのが、インド人VSパキスタン人の対立。第二次大戦後の印パ分離により、ヒンドゥー教を信じるインドと、イスラム教を信じるパキスタンに分かれたわけだが、今でも続いているこの対立がこの作品のベース。

宗教対立は食文化としても現れていておもしろい。私たちはインド料理だと思っているカレーのメインメニュー「チキンカレー」はインド人は食べないんだね。あれはパキスタン側なんだ。他のインド映画でも、キッチンでチキンを料理しているだけで「汚れた、汚れた!」って大騒ぎしてたけど、本作でもシャヒーダーがチキンを食べたらバジュランギおじさんは大慌てでさあたいへん! チキンひとつでここまで大騒ぎになっちゃうのね。

159分の道のりは、バジュランギの生い立ちから恋愛〜シャヒーダーを連れてのパキスタンへの旅〜スパイと勘違いされてからの逃走劇へと、まさに一本の映画の中にロマンス、アクション、バディムービーと様々なジャンルが入っているんだ。邦画だったら2時間に収めるために、あれもこれもカットしちゃうだろうけど、このごった煮だけど、徹底したサービスぶりがインド映画なんだろうな。

そして、この逃走劇の中で出会うレポーター役のナワーズッディーン・シッディーキー(名前、長!)がいい味出してるんだよな〜。後半はこの人の活躍もキーになる。

で、バジュランギおじさんは無事にシャヒーダーを両親の元に連れて行くことはできるのか…、なんだけど、まだまだあるこの先の波乱の展開はご自分の目で。

ただ、こういうのをインド側に作られちゃうと、パキスタン人はどう思うんだろうね。戦争の結果としての両国間の対立がある地域では、どこでも自分たちに置き換えて考えることのできる普遍的なテーマ。韓国と北朝鮮、今対立が表面化している韓国と日本にだって置き換えることもできる。

国も宗教も飛び越えるドラマの結末には、ともかく感動して泣かされます! インド映画のパワーはハンパないわ。超オススメ!
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