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コインロッカーの女のmizunoのレビュー・感想・評価

コインロッカーの女(2015年製作の映画)
3.8
ここまで完璧な一重のヒロインがいまだかつて存在しただろうか…。
いや、わたしは記憶にない。
安藤サクラ、多部未華子、吉高由里子…日本を代表するアッサリ顔の女優たちだってみな奥二重である。「ああ、やはり正真正銘の一重にヒロインポジションは無理なのか…」そう諦めていたところに登場したよ救世主が!キム・ゴウン!あんたはやってくれた!紛れもない一重ヒロインの先駆者になるだろう!



というわけで、ヒロイン演じるキム・ゴウンの面構えがこの映画を成功に導いている。なんと言ってもあの目が主役だ。ナイフで切れ目を入れたような細く鋭利な眼差し。見つめられただけで氷ってしまいそうな迫力だ。コインロッカーに捨てられ闇組織に育てられた少女の人生を、彼女はあの瞳だけで語っている。スゴい!参った!
まあ、ストーリー自体は結構強引だったりする。ヒロインが辿る過酷な運命をほんの2、3日の時間軸の間で描いているもんだから急ぎ足なところも否めない。彼女はこの短い時間の中で孤独な忠犬から恋する乙女になり、組織の仲間全員から狙われるという忙しい目に合う。しかし、気持ちが置いてきぼりになることはない。繊細に感情を宿すキム・ゴウンの魅力に引き寄せられてしまうからだ。特に恋をして脆くなってからの彼女は素晴らしい。
ボロボロと涙を流しながら立ち向かう姿に、元祖泣き虫ヒロインである「ニキータ」を重ねてしまった。強くて可憐で愛おしい。思わずその肩を抱き寄せたくなる。



相当血ナマ臭いけれど、これは意外にも家族の物語だ。人生を選ぶことの出来なかった子供と、因果応報を身に焼き付ける親との悲しい運命を描いている。
「コインロッカーを出なければよかった」そう呟いていたヒロインのこれからの人生はいったいどうなるのだろう。あの瞳の色がどんな風に変わっていくのか見てみたい。整形は絶対にしないでくれ。
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