南

ジャッキー ファーストレディ 最後の使命の南のレビュー・感想・評価

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ラストのジャッキーのセリフ

「物語の英雄達は、時を超えて人々の記憶に刻まれる」

きっとこの後には

「ならば英雄になれなかった者たちの記憶は、誰が引き受けるというの?」

と続くのだろうな。

人間はすべて過去の恩恵を受けて存在する。

偉大な業績を残した先人たちに敬意を表するため、

歴史を編集し、飾り立てるのは自然な営みだ。

一方で大多数の人間は、歴史に名を残すことなく忘れられていく。

だからと言って、勝ち組によって編集された歴史だけを歴史とあがめ、

忘れられゆく者たちの事を、あたかも無かったかのように済ませるのはおかしいんじゃない?

そんな普遍的なメッセージを伝えるために、

たまたま『ケネディ夫人の伝記』という方法を用いたんだろう。

ラストで埋葬される子供たちは、2人とも死産だったり、生後すぐに亡くなったりで、

そのままだと誰からも忘れ去られるだけの存在だったはず。

その彼らの葬儀シーンをわざわざ使ったのは、2つの理由があるように思う。

「自分の子供だから」というジャッキーの個人的な心情、そして

「無意味で弱い存在を無かった事にする社会に未来はない」

という意思だ。

決して「すべての生に意味がある」などという安っぽいヒューマニズムじゃない。

ところでさっき何となく"メッセージ"と書いたけども。

同年公開の『メッセージ』も同じく「儚く散った過去への敬意」がテーマだったな。

2つとも心に残る映画でした。
南