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LIVE!LOVE!SING! 生きて愛して歌うこと 劇場版のwesttribeのレビュー・感想・評価

4.0
2016年劇場鑑賞6本目。

「その街の子ども」で阪神・淡路大震災を、
「あまちゃん」で東日本大震災を描いた井上剛監督による、
ふたつの震災のもうひとつの物語。NHKでの放送時は未視聴。
「ソロモンの偽証」「ガールズ・ステップ」で好演していた石井杏奈が今回もいい味出してます。

実は、「しあわせ運べるように」という歌が少し苦手です。
いい歌だとは思うのですが、歌詞がどうも。
とくに「亡くなった方の分も」というところ。
押し付けがましいとまでは言わないが、何か背負わされるようで。
それは、忘れたい人も忘れたくない人も、
それぞれの心の中で、それぞれに抱いていくものだと思うから。
詩として読むぶんにはいいのだけど、歌に乗せると聞き流せない。

この物語は、福島から神戸に避難した少女が、
自分の心と、他者の心と、住めなくなった心と向き合い、
「しあわせ運べるように」を歌えるようになるまでの物語だ。

他者を思いやり、支え合う心は尊い。
しかし、他人には触れてほしくない、
自分だけで消化(昇華)しなければならないものも確かにある。

「富波町の被害って、神戸みたいにチャラくない!」
「呪いのような復興のヒロイン扱い」
「見つかったら終わる」
剥き出しの言葉が突き刺さる。

あの劇中歌はいったいなんだったのか。
主人公の潜在意識が見せたものか、
あるいは残留思念か、街そのものの意思か。
そこで救いのように、指弾のように繰り返される「つもり」。
この言葉がもたらす希望と偽善に、初めて思いを致した。
阪神後に、東日本後に、自分はどれだけの「つもり」を重ねてきたのか。

シネマート心斎橋での上映は29日で終了。
夕方の回は、5人ぐらいしか入っていなかった。
レイトショーもあるので、少しでも多くの人に観てほしい。
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