SSDD

マジカル・ガールのSSDDのレビュー・感想・評価

マジカル・ガール(2014年製作の映画)
3.8
■概要
白血病で余命が長くない少女に父親は望むことをしてやりたいと考えた。
彼女は日本のアニメにハマっていて魔法少女に憧れていた。
父親はその衣装を一式着せて上げたいと望むが失業者となり、デザイナーがついたイベント衣装の高額なものを買うような余裕はない。
それでも願いを果たそうと動く…。

■感想(ネタバレなし)
観終わって放心状態になりました。
間違いなく怪作で今もこの点数で良いのか、整理がつかないです。

このタイトルとこの概要でなぜこんな悍ましい内容なのか、ヒューマンドラマのハートフルなものを好む人は観てはいけません。希望はひとつもなく絶望しかありません。

この作品の最も恐ろしいところは起となる出来事の後に結末だけ見せて、経過を見せないことで想像させて残酷さを人の想像力の中で増幅させるという手法を取ることです。
人の性質上、謎が生まれるとその空白を埋めるために経験値や知識からその空白を埋めようとします。埋めるものが経験からなければ知識から、知識で埋まらなければ想像にと連鎖していきます。
そのため経験からであれば似たような事象を考えて過去の嫌な思いを追体験することもあり、最悪のことを思い出させられることすらありえます。サスペンスだとことの他この技法は残酷な想像をさせますね。

金の工面に奔走する男は、困り果てた結果最も最小限の悪行を選んだはず。
そして我々観た側が体験した通り、起きた事象に対して結末だけ経験するため何もかも意味もわからない状態になったはずです。

ただ、現実というのは物語と違って過程を詳らかに解ることは当人以外少ないため、映画という作品の割に現実主義な見せ方なのかもしれません。

万人には全くオススメ出来ませんが、自分の頭では想像しない狂った世界観を体験できてよかったです。映画は自分の想像を超えた観点、倫理観など与えてくれるものが好きです。








■感想(ネタバレあり)
日本贔屓で好きなのはわかるがあまりにニッチな魔法少女や、80年代のような日本楽曲を使う時点で恐ろしい感性です。
サラサラも聞いたこともないし、エンディングの曲もこの作品観た後だとおどろおどろしい…。

魔法少女…その意味が二人の少女が望みをいうとどんな手法(犯罪を犯して)でもそれを叶える男が現れるという魔法を使ってしまった少女の話でした。…そんな残酷な寓話とは思ってもなかったです。

父親を射殺したダミアン。
なんと頭のいい男か、頭がパニックになりそうな状況でも冷静に判断し、カフェではこれから向かう家の前に障害となりえる通報を行なう可能性のある二人を殺害。
娘を観て動揺するも戻って殺害。

必要な証拠となる携帯をもってバルバラの場に向かって、まさかあの初めの場面の持っていないから渡せないという皮肉を返す。

ダミアンは全ての望みをバルバラに二度も操られ叶えるのかと思ったが、抵抗を見せる。

バルバラは終始嘘を吐いてはいけないという枷があったのかもしれない。
嘘を言えば夫も消え、魔法も使えなくなる…まるで寓話、魔法を使う条件に嘘をつかないこと、嘘がわかってしまえばその魔法は解けてしまう…。
バルバラは魔法少女から魔女になっていたのだろうか。

とにかく淡々と進む中、最後の最後にダミアンの魅せる結末の流れと早さが頭の整理も追いつかせぬ最悪のラストまで魅せられました。素晴らしい後味の悪さです。
しかも娘の本当の願いはラジオから流れる父親といることという皮肉。

唯一の救いは娘もどこかおかしく情緒を感じられないし、父親もずれていたので両者に同情的、感情移入をしていなかったこと。それをしていたらこの映画悪夢に変わりますね。
SSDD

SSDD