猫脳髄

スランバー・パーティー大虐殺の猫脳髄のレビュー・感想・評価

3.7
ロジャー・コーマンの会社が資金提供と配給を担っているが、女性監督、女性脚本家によるスラッシャー映画とは、この時代ではとても珍しいのではないか。管見ではあるが、類例を知らない。

元もとフェミニスト作家のリタ・メイ・ブラウンが書いたパロディ脚本が、本格的なスラッシャー作品に改変されたそうだが、パロディに見られるシニカルな目線が排除されたうえに、スラッシャー映画の「様式」を忠実に踏襲した作品に仕上がっており、言わば「メタ・スラッシャー」作品(※)と呼ぶべき稀有な存在となった。

パジャマ・パーティーに集まった4人の女子高生が、逃亡したシリアルキラーに襲撃されるというごく単純な筋書きだが、演出のひとつひとつがスラッシャー映画の典型を実に経済的に無駄なく組み合わせており、映画としてもテンポがいいし、ハスに構えず真面目に取り組んでいるので、繰り出される「スラッシャーあるある」がとても笑えるのだ。

賢明な(ファイナルガールになりそうな)主人公、シリアルキラーが逃げ出したというニュース、シャワールームやお着替えなど無数のサーヴィスカット、添え物のような男子学生(犠牲要員)、役に立たない隣人のオッサン、無数のフェイントカット、副主人公の転校生姉妹の参入、天丼を辞さないサスペンスの盛り上げ方、繰り返す判断ミス、シリアルキラーの行動形式…等々、スラッシャー映画の教科書になりそうな描写が山盛りである。

「典型」であるがゆえに大アタリしたらしく、何本も続編が製作されたというのは皮肉だが、スラッシャーブームを相対化した作品がこの時期に現れていたというのは大きな発見だった。

※一般的にウェス・クレイヴン「スクリーム」(1996)が相対化の嚆矢とされるだけに、15年近く早い本作の存在はもっと重視されてよい
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