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ハドソン川の奇跡のReznorのレビュー・感想・評価

ハドソン川の奇跡(2016年製作の映画)
3.7
実際に事故が発生した時のニュースの画面を覚えている。飛行機大好き&某航空会社のマイルをコツコツ貯めている身としては、見たいような怖いような、複雑な気分で挑んだ映画だった。

物語はイーストウッド映画らしく淡々と進んでいく。事故の状況の詳細はラストに描かれるため、途中までは観客も「その瞬間コックピット内では何が起こっていたのか?」「本当は判断が誤っていたのか?」と言うもやもやを持って見ることになるのだが、そのおかげでラストで無事に機体がハドソン川に着水した時、体の底から小刻みに震えが来るような、そんな感動があった。過剰な演出を行っていない淡々とした雰囲気が、逆に機長たちの冷静さや素晴らしい判断力などを浮き彫りにしていて、感動に深みを与えていたのではないかと思う。

パイロットたちの適切な行動や、救助に向かった人たちの迅速な行動、それらどれか1つでも欠けていたら、もしかしたら全員無事では済まなかったかもしれない。そして沈みゆく飛行機の中に戻って残っている人がいないか確認してまわる機長の行動は、責任者として当然と言われるかもしれないけど、想像しただけでも恐ろしい。
事故調査委員会が事故の原因を究明することで、次第に機長たちに疑いの目が向けられていくが、もちろん彼らはヒーローを引きずり下ろすつもりでやっているわけではなく、ただ職務として真実を追い求めているのだけど、「なぜこんな目に合わなければならないのか」とこちらも思ってしまうほど厳しい目が向けられる。結果的に事故直後の行動は正しかったと立証されるわけだが、機長、副操縦士、またその家族は、本当に何度も事故当日の朝に戻りたいと思ったことだろう。これはもし日本でこういった事故が起こったとしても、同様の追及を受けることになるのかな?

飛行機に乗ったときはいつも着陸→停止のあと、「機長ありがとう!」とスタンディングオベーションをしたい気持ちを抑えて心の中で感謝を伝えているのだけど、次に乗ったときはさらに感謝の想いが強くなるだろうと思った。

あまり関係ないけど、この映画を見るまでUSエアウェイズ1549便の事故と80年代に起こったエア・フロリダ90便の悲劇の事故を混同してしまっていた。どちらも真冬の川に飛行機が墜落(USエアウェイズは着水)した事故だけど、状況がかなり異なるとはいえ、パイロットのさまざまな判断によって真逆の結果になってしまったのは残念でならない。
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