ウズラ

アノマリサのウズラのレビュー・感想・評価

アノマリサ(2015年製作の映画)
4.0
たまたまprimeでそろそろ配信終了ってところに出てきたので観た。

鑑賞から数日経って、ようやく気持ち?に整理がついたので感想を書いてみる。
・ ・ ・
カウフマンの脚本作品は結構好きなので、
わたしは結構おもしろかった。

日本の劇場未公開だったようだ。
ストップモーションアニメってところも好き。

これは観る人のタイミングと年齢によって感想が割れそう。

中年以上の人付き合いに疲れたひとは、何か感じるものがあるかも。
この自己中な初老のおじさんに同感するわけではないけれど、
どこか厭世的で晴れやかな気持ちになれない重苦しさを抱きつつ、どこかで新しいスペシャルな出会いを期待してる乙女みたいな妄想も隠し持ってる感じ、、、
分かる人には分かりすぎて嫌な気持ちになるだろう。同族嫌悪。

だいたい主人公がただの独りよがりなおじさん、て。地味すぎる。笑

他人の顔と声が全て同じに見えたり聴こえたりしてしまうこの主人公の職業が「カスタマーサービス」というのも興味深い。
しかもこのおじさん『他人のためは自分のため』?みたいな著書を出してて、その講演のためにシンシナティに出張に来ている。

誰に対しても常に同じ声のトーンと愛想笑顔を保たなければならない職業ゆえか、人は違えど同じようなことばかりクレームしてくる顔の見えないお客様を相手にしていた結果、フレゴリの錯覚に陥ってしまったのかも。
と、長らくテレオペや接客をしてきた身としては思う。


以下、思いつくままに感想。ほぼ苦笑いで。

・人形がよくできている。途中、人形であることを忘れた。

・この街に住んでる元カノに、電話しちゃうよね〜
自分には妻子がいて、元カノはまだ独身って設定も、リアルで心が痛い。愛し合っていた彼女からも突然逃げてたのは、リサの時と同じで急に冷めたのかな…

・リサだけを部屋に誘って、そこから情事に向かうシーンが見事!
これ、人形だからいいんだろうな。
役者だったらあんなに丁寧に描かず、すぐベッドへ行きそうなものを、何飲む?から会話が始まって、たわいもない会話や、リサのシンディ・ローパーの上手くない歌とか…本当リアルな時間の流れを魅せてた。
あとで読んだけど、あのシーンの撮影に6ヶ月かけたとか。

・大人の玩具の店で息子にプレゼントを買うなよ…
あの日本人形、不気味。♪モ〜モタロサン モモタロサン オッコスィニツッケタ〜
なぜこの童謡なんだろ??

・リサ、8年ぶりにできて良かったね。笑
緊張からお喋りが止まらないリサ。顔に傷があるけど明るく振る舞おうとする彼女、だんだん愛らしく見えてきた。
ラストで、彼女だけが晴れやかな顔だったのはよかった。


・朝になって、2人で朝食を食べながら、おじさん盛り上がって離婚するとか言い出してたのに、リサの食べ方とかを見てて、急に現実に引き戻される感じで、彼女の声も他の人と同じように聴こえはじめて、オッサン勝手に落胆するとか、マジムカつくけど!!

ムカつくんだけど、
その感じ、わたしも分からなくないのでホントごめんなさいって思いました、はい。

あの自己中なオッサンは、特別な人になんて一生出会えない。客を大切にできたとしても、周りの生身の人を誰も大切にしない(愛そうとしない)のだから。
とても皮肉に満ちたおはなし。

何にも満足できなくて悩む中年クライシス…


とまぁ、こんなに長々と感想を書ける時点で、わたしはあのオッサンと似ているところがあるのだろう。苦笑

あそこまではひどくない(と思いたい)

そして、わたしはおばさんだ。
ウズラ

ウズラ