のこ

ふきげんな過去ののこのレビュー・感想・評価

ふきげんな過去(2016年製作の映画)
3.5
⚠︎「続きを見る」以降、一部ネタバレあり長文 ⚠︎

Amazonプライムビデオでの配信が終わる前に駆け込み視聴。

いつも不機嫌な主人公・果子は平凡で退屈な毎日に飽き飽きしている。口癖は「つまんない」「わかんない」。同じく気難し気な周りの大人達、謎の男・康則、突然現れる死んだはずだった何かとぶっ飛んだ未来子。まあこの辺りまではあらすじの予想通りだが、一切動かない(人形)の赤ちゃん、運河に現れたワニ、ワニに赤ん坊を食べられたと槍を持って運河を見張る海苔屋の奥さん、マントで給水タンクから飛び降りる康則など全体的に設定が普通じゃない。内容は別にコメディではないのだが、まあこれは冷静にツッコんじゃダメな作品なのだということは観ていく中で理解した。

展開は、特に大きなドラマもなくのっぺりと進むのだが、残り20分あたりで果子の怒りや喜びの感情が表に出てくるシーンとなり面白くなってくる。未来子との土手のシーンとか母・サトエとの軒先のシーンなんて凄く好きだなぁ。あとラストでもう一度再会した後の「あんたの見てる未来ね、それ全部過去よ」のセリフが良い。

そして、果子は何故あんなに不機嫌で現実世界に満足できないのだろうと考えるとき、未来子と出会えてなかったからという結論が出てくる。うすうす生みの母親は別にいるんだろうという思いを抱えながら生きてきた果子は無自覚に彼女の何かのピースが欠けた状態にあり、その何かを埋めるような非日常な出来事を求めていたのではないか。映画内でそれを悲観する果子は描かれていないし、恐らく悲観もしてないだろうからあくまで無自覚で、決して「母親との再会」という直接的なものではない。屈折した彼女なりのないものを満たせる何か、だ。それがワニだったり、爆弾だったりするのかも。少なくともそれはセックスではなくて、もっと純粋なもので、稀有なもので。そういう意味で果子はとても子供に感じた。

そんな果子が、未来子との出会いによって劇的に変わるかと言えばそうではなく、それは微々たるものにしか視聴者には感じられないかもしれない。しかしながら、「見えるものなど見てもしょうがない」という果子の言葉と最後の笑顔は我々に前向きな未来を想像させる。

登場人物それぞれが掴みどころがなかったり、無愛想だったり、良い人でもないのに、憎めない映画だった。特にカナ(山田望叶)、次いでサトエが好き。(でも父親だけはただのヤリ◯ンとしか思えませんでしたごめん)
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