はるきみどり

リップヴァンウィンクルの花嫁のはるきみどりのネタバレレビュー・内容・結末

4.3

このレビューはネタバレを含みます

なんとなく、普通に人並みに過ごしてきた七海が、何でも屋に導かれるままに不思議な人生歩むことになる物語。
お手軽に出会った結婚相手は、結局よく知らないまま疑って、騙されて、捨てられる。何もかも偽って出会った親友は、最後まで本心を伝えてくれなかったけれど本当の『結婚相手』になる。

行くところがない、話す相手がいない、そんな寂しさから縋る相手は『ネット』であり、そこにいるのは半分偽りの自分。誰だかわからない、だからこそ便利で、優しい。
とても便利で得体が知れない、でも背中を押してくれて温かみもある…何でも屋安室はネットの化身のように思いました。
また、『結婚式』という時代遅れな儀式の滑稽さと幸福感が対比されて描かれるのも印象的。幸せは、形に拘るべきものではないよなぁと見せつけられます。

七海はいつも流されるままで、鈍くて、見ている側はずっとヒヤヒヤする。岩井俊二監督作品にある、焦り、寂しさ、怒り、虚しさは、今作も見ていて不快になるほど。それでも目が離せないのは、ストーリーに加えて主演女優の魅力に依るところが本当に大きいと思う。
黒木華、当て書きのストーリーだそうですが、本当に監督の愛が伝わってくる美しさでした。Coccoの浮世離れした存在感、綾野剛の得体の知れなさも絶妙です。

クラシック音楽に乗せた綺麗な映像で人のグロテスクさを描く、素敵な岩井作品でした。
岩井俊二監督、大好きです。
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