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リップヴァンウィンクルの花嫁のaliolaのレビュー・感想・評価

1.5
好評価が多い中、個人的にはリップヴァンウィンクルの花嫁を通し色々考えさせられました。あらゆる芸術、映像、絵画、造形とは止めどない探究心と創造性から表現の再生と破壊を繰り返しながら作品を世に放ちます。それが芸術家の性のようなもので、その性故に時に作風が時に大きく変わったり、評価が大きく分かれたりするもします。それでも内側に溢れる探究心と創造性から生涯創作活動を止めることができず、作品に精魂を注ぎ込む、様々な芸術に触れ個人的には芸術、創作についてそう感じています。
岩井監督は初期の作品には輝きとアイデアもあり、そしてリリィシュシュでは今までの岩井俊二から先に進むためのチャレンジ精神も感じられ、才能を感じる映像作家で楽しみにしていたのですが、10年以上ぶりに新作リップヴァンウィンクルの花嫁を観て、監督は芸術家から、なんという幼いまま大人になってしまったアトリエで絵を描いているおじさん作家になってしまったというような印象に変わってしまいました。
この傾向は花とアリスでも感じてはいましたが。
この映画の感想によく現実と虚構という言葉が出てますが、現実も虚構もこの映画に果たしてあったのでしょうか。私は現実ばかりか虚構さえなかったと感じています。
小手先の笑いやデフォルメーション、多用するクラシック音楽、スローモーション、隠れキャラ的な配役、特に雨の中を歩く七海の描写と実際のアダルトビデオ女優の使い方にここはこれやっとけばオッケーでしょ的な創造性のなさが大きく現れている様に感じられ非常に残念でした。
エモーショナルな映画のようでエモーショナルではない映画なのですが、特定の世代特定の設定の人には非常にエモーショナルに感じ取れるよう作ってあるので(ここが一貫して岩井監督の抜群のセンスだと思います)、その部分に引っかかりのある人と俯瞰している人で評価が分かれるのも理解できます。
役者については黒木華、綾野剛はどちらも特にはといった感じですが、coccoに至っては歌手を抜擢している点では初期作品のcharaほど斬新さもなく、天真爛漫さも精神的な脆弱さも表現できておらず、惹きつけられる愛の深さを持っているような人間描写の掘り下げがなく、ただフラフラ〜と唄うように、酒に酔うような演技と演出で、それでこの世界は愛が溢れていると言われても入り込めず、マイナスに感じました。
個人的にはオススメできないというより、何年か期待した分残念といった感じでした。
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