たろたろ

リップヴァンウィンクルの花嫁のたろたろのレビュー・感想・評価

4.5
ハリーポッターの死の秘宝の後書きで翻訳者の松岡裕子が書いていたことを思い出した。(正確な言葉は覚えてないけど、)その人の価値はその人が死んだときに泣いた人の数でわかる…。親にも勘当され、おそらく作中では語られなかった壮絶な過去のために壊滅的に自尊感情を失っていた真白。それでもその死には少なくない人たちが恥も外聞もなく号泣してた。特に綾野剛のあの突然の涙には不意を突かれてつい僕も泣き出しそうだった。何故って、ああみんな真白が大好きだったんだなって即座に理解できたから。
結局七海を殺せなかったところにみんなに好かれた理由が見えると思う。死ぬ前の数ヶ月間、七海のためにあれだけお金と時間を費やしてきたのにね。それとも七海が一緒に死ぬって言ってくれただろうからか。
綾野剛と真白との関係や真白の過去など色々想像するだけでめちゃくちゃ面白くて奥が深い映画だった。

特に黒木華(調べてて初めて知ったけどハルって読むんですね)の演技が抜群にいい。最高。そらぁ色んな賞を総なめにするに決まってる。女の子の魅力を引き出すことに置いて岩井俊二の右に出る人はいないですね。
七海は見ててイライラするくらいオドオドしていて、最早愚鈍ですらある。それでもう、綾野剛に騙されてばっかりで、いや気づけ!気付くんだ、七海!ってイライラしながら呼びかけてしまってた。でも、結局、そんな純真さに真白は救われたんだろうし、真白が七海を殺さないことを選んだのもそのためだと思うと、何が正しくて何が正しくないのかわからない。というか、そもそもどんな選択にも正しいとか正しくないとかが果たしてあるのかがわからなくなってしまった。だってもし七海がアムロに騙されないような女の子だったら真白は救われなかったはずだし…。

岩井俊二の主要な作品をこれで見終わったので、以下その感想を。
まあ相変わらずスワロウテイルは苦手だけど、岩井俊二はかなり好き。何が好きかというと、女の子を魅力を引き出すうまさが圧倒的。もう太宰とか谷崎とかに匹敵するんじゃないかってくらい。もちろん女の子を魅せる演出と表現もすごいんだけど、それより女性という生き物も理解がすごい。岩井俊二の映画みるだけで、女の子ってこんな風に考えて、こんな風に行動するんだってわかる。世の男子の味方ですね。
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