Mako

ディセンダントのMakoのネタバレレビュー・内容・結末

ディセンダント(2015年製作の映画)
4.3

このレビューはネタバレを含みます

主にプリンセスシリーズに出てくるディズニーキャラクターやその子どもが、これでもかってくらい登場するところがまさにディズニーチャンネルムービーらしい。
舞台が高校であること、疎まれる転校生やそれを気にしない人気者、男女それぞれにお洒落とスポーツが関係してくるのもまたらしさのひとつ。あとはやっぱり歌唱シーンが派手で見ていて気持ちいい。歌も踊りも皆が楽しんでいるのが伝わってくる。

主人公はマレフィセントの娘マルだが、白雪姫の継母の娘イヴィやジャファーの息子ジェイ、クルエラの息子のカルロスの3人もかなり存在感は強かった。
悪の道へ進めと言ってくる親の元で育ち、ロスト島を出たことで自らの抱いていた違和感の正体や本当の自分に気付くストーリだった。ヴィランズである親たちの縛りから解き放たれるというのは、彼女達の自立や自己発見のみならず、ヴィランズの子であるという周囲の偏見からの脱出の片鱗とも考えられる。マルがマレフィセントに打ち勝ったのちにオーロラ家が彼女を見守りオードリーと笑い合う場面からそれは読み取れる。

何故様々な王家が集まる国が美女と野獣の国なのかは不明だが、個人的には良い選択だと思う。ディズニーの童話シリーズでは、自らの過ちによるものでもなく突如悲しい境遇に置かれる主人公も少なくない。しかし美女と野獣においてベルが捕らわれたのは父親の過失でありその身代わりとなったから、野獣に至っては当時のではあるが野獣自身の堕落さと性格の悪さで野獣にされている。主に野獣には自分自身も間違いを冒した過去がある。それを踏まえるとマル達が本当の自分に気付く為の場所、そしてそれを見守る大人として適任だったのではないだろうか。

そしてメインの4人に関してはとても良くバランスが取られていると思う。マルとイヴィを比べると島にいる間はマルはリーダーシップを取り、イヴィは美しさを常に気にしていた。転入後はマルは自分の恋心に気付きお洒落を初め、イヴィは賢さという自分の価値や純粋な優しさに触れた。
暴れ回り突進するジェイと3人に振り回されがちなカルロスにも成長が見られる。ジェイはスポーツを通してチームを学び協力したり勝ち負けではなく友人と仲良くする事の楽しさを知る。カルロスは犬の本当の姿を知り、またスポーツを通して自分の機知に気付く。博物館での後始末からも賢さが垣間見えたがそこに自覚が生まれたと考えられる。
特に注目したいのはイヴィとカルロス。イヴィに対しマルがかけた「男の子より馬鹿な振りをしなくていい」というのは、彼女が王子との恋を望むが故に自らの賢さや聡明さを隠そうとしていたことに気付いていたからだ。優秀な男の子と結ばれる為には優秀過ぎてはいけないというジェンダーステレオタイプからの脱出の1つの形である。またカルロスはジェイと取っ組み合いで負け続けていた。しかし試合前ジェイがカルロスと共に出場したいと言い「こいつはチームの頭になる」と言ったように、実際頭脳プレーで活躍した。パソコンを器用に扱うシーンがあったり、犬とずっと仲良くしていたりこれも従来的な男の子のステレオタイプからの脱出の1つの形である。

憧れる先は必ずしも王子とお姫様だけではないと伝えられる映画だと私は思う。
Mako

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