ボブおじさん

戦国自衛隊のボブおじさんのレビュー・感想・評価

戦国自衛隊(1979年製作の映画)
3.5
実に惜しい映画だ。
いや惜しいを通り越して、今となっては悔しい。
この映画は日本映画史に残る傑作映画にすべきだった。

伊庭三尉(千葉真一)率いる自衛隊一個小隊が戦車、ヘリコプター、装甲車などの近代兵器もろとも400年前の戦国時代へタイムスリップ。彼らの前に、武田信玄と戦うために川中島へ向かっていた戦国武将・長尾景虎(夏八木勲)が現れ共に天下を取ろうと誘う。

半村良原作のこの最高のレシピと千葉真一、夏八木勲、渡瀬恒彦、真田広之、薬師丸ひろ子、竜雷太という最高の材料を揃えながら不慣れなシェフ(斎藤光正監督)と見当違いのオーナー(製作・音楽監督の角川春樹)のせいで何でも突っ込んだ闇鍋にしてしまった残念な作品。

タイムスリップ×自衛隊+戦国時代×ホモセクシャル
これだけ揃えばもう十分面白い映画が作れるはずなのに、勘違いオーナーが青春恋愛と劇中歌と顔見せキャストいう不要な要素を入れたため、ごった煮の何だかわからない映画になってしまった。

この映画は戦国時代に紛れ込んだ戦うために生まれてきた男(千葉真一)が、戦国の世で天下を取る野望に燃える武将(夏八木勲)に出会い。己の中に眠っていた闘争本能に火がつき徐々に狂っていく過程を時代を超えた友情以上の感情と共に描くという日本映画が今まで誰も取り組めなかったテーマに挑んだ意欲作だった。

原作の自衛隊対武田信玄という発想は間違いなく面白い、ここに千葉真一×夏八木勲という日本映画史上これ以上ないヒゲとフンドシが似合う漢が互いに手を取り交じり合う。更にここに信頼が裏切られ愛が憎しみへと変わった渡瀬恒彦が絡むという贅沢な三角関係。

アクションシーンでは千葉真一がヘリから宙吊りになりながら機関銃を乱射し、勝頼役の若き真田広之はヘリに身軽に飛び移り、機内での格闘やヘリからの脱出ダイブなど世界基準の動きを見せる。

だが肝心なところで流れる挿入歌が全てをぶち壊す。またどう見ても自衛隊員に見えないキャスティングによって緊張感が欠落するなどどうにも惜しい。

編集も思い切って現代パートや戦国時代の娘との恋愛などカットして2時間以内に収めた方が良かった。サービスショットは若武者薬師丸ひろ子の一突きでじゅうぶん。

今は亡き千葉真一と今をときめく真田広之という世界的なアクションスターを揃え、時空を超えた男たちの本格ホモセクシャル映画として歴史に名を残すはずの作品を自意識過剰な目立ちたがりのプロデューサーが台無しにした、誠に残念な映画だった。


公開時に劇場で鑑賞した映画をDVDにて再視聴。