gunner16

ジュラシック・ワールド 炎の王国のgunner16のネタバレレビュー・内容・結末

1.8

このレビューはネタバレを含みます

【主人公たちと製作陣の身勝手さ】
恐竜が大暴れし、恐竜たちで悪巧みをしていた人間が恐竜たちにしっぺ返しを受ける。ジュラシックパークシリーズのテンプレートだ。今作もその例に漏れずテンプレートを活用した作品となっているのだが、「恐竜の存亡」を扱うには随分薄っぺらい脚本だったと言わざるを得ない。

率直に言って、「ジュラシックワールド」ではスカッとするような暴れ方を恐竜がしてくれればそれで良かった。恐竜がいることが常識となっている世界観なので、初代「ジュラシックパーク」のように、初めて人間が恐竜に遭遇したときのドラマ性はいまさら求められないし、ハリウッド的にも「ぼくのかんがえたさいきょうのきょうりゅう」を中心としたストーリーになってしまうのが不可避なので「よーし存分に暴れたまえ!それで十分だ!」としか言いようがない、というのが正しいかもしれない。

今作では「恐竜の滅亡」という重厚なテーマを取り入れるも、マルコム博士の「あるがままに自然に任せておけばええねん」という主張に基づき、政府の関係者が「恐竜たちには申し訳ないがこのまま滅亡させる」という方針を立てたにもかかわらず、主人公たちは
「滅亡はかわいそうだから救う」
→「いややっぱこのままアメリカで生きていても辛いよね…」
→「いやいやでもでも」
と方針を二転三転させるのだ。最初に保護すると決めたなら最後まで突き通さんかい、と思ってしまう。主人公たちは当初は恐竜たちの保護一択で突き進むも、自分たちの手に恐竜たちの存亡がかかっている、とわかった瞬間、現実的に恐竜たちを保護する手段がないので
「やっぱ恐竜たちにはこのまま滅んでもらった方が幸せかも」
と考えを変えているようにしか見えないのだ。まるでお金がないとペットを捨てるような人間の言い訳だ。挙げ句の果てにはクローン人間の娘が
「恐竜たちにだって生きる権利はある」
と言い屋敷の外に恐竜たちを解き放つのだ。主人公のオーウェンとヒロインのクレアが散々迷って決めたならまだしも、そこにいた子供の判断で恐竜の存亡を決めちゃうような展開は、製作陣がそのテーマについて考える責任を放棄して出演者の子供に委ねたようにしか見えなかった。
「まーほら、皆色々考えることはあるかもしれないけど、恐竜が生きてた方が楽しいだろ?」
とでもいうような、視聴者をバカにしたような製作陣の声が聞こえてくるようだった。

恐竜の映像も、これといって見たいシーンがあったわけではない。悪役がT-REXに食われることくらいだと思う。今作の「ぼくのかんがえる以下略」のインドラプトルは正直「結構デカいラプトル」以上の怖さがない。確かに睡眠薬にやられたフリをするのは知性があるのかもしれないが、初代のラプトルは囮を置いてハンターを狩るという知性があったことを知っている身としては、「まぁハイブリッドなラプトルなんだしそれくらいできても不思議じゃないよね」と思ってしまう程度にはインパクトが薄い。
悪役恐竜としては前作のインドミナスレックスの方がずっとインパクトがあった。狡猾で獰猛で殺傷能力が非常に高いことを劇中で示すことができたからだ。前作では、そんなインドミナスレックスにも、自分より遥かに大きなサイズの恐竜にもブルーは躊躇なく飛びかかっていった。勝てる可能性はほとんどないにもかかわらずインドミナスレックスに挑むブルーの勇猛さには感動を覚えたのだ。
しかしブルーがインドラプトルに飛びかかっても、サイズ的にも少し大きいだけだし、デカいとはいえ相手がラプトルであることに変わりはないわけだから、なんだったらブルー1体で勝ててもおかしくないのでは…?ワンチャンあるのでは…?と思ってしまうのだ。これでは盛り上がりようがない。ラプトルはジュラシックパークシリーズの最強のハンターなので、もっと執拗に、機敏に、したたかに人間を襲って欲しかった。

ブルーのことは今作でまた好きになってしまったので、ブルーに免じて0.8点足しておく。ブルーたちがもう二度と製作陣に変に利用されないことを祈る。
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