冒頭での夫婦と息子たちのぶっ飛んだ会話をテンポよくさばく演出がホークスのスクリューボールコメディみたいで楽しめたし、その後の上流階級での妻の座をめぐる三人の女のバトルもそんな調子で展開されるのでそれなりに満足。そしてこの作品を含めどんな題材でも平均点以上の作品に仕上げる小沼勝監督はまさしく職人で、こうしたところが日活に重宝されてロマンポルノ終焉まで活躍できたのかもと思える。
マイペースそうで実は計算高い女中(原英美)のしたたかさがドラマに絶妙なスパイスをもたらす、彼女が豪邸を掌握しようとするドラマは『召使』や『下女』みたいなのに、どんな状況でもひたすらすっとぼけて相手の一段上を行く対応するのが痛快すぎてやっていることはダークなのに笑えてくる。彼女がテーブルの上で山本リンダの歌をバックに踊り狂う下品なミュージカル場面の、バカっぽくダンスしているように見えてテーブルにいる家族を見下す仕草が女中のキャラクターをよくあらわしていた。
裏のあるじ候補出現に焦る二人の女性(家長である父の後妻と息子の嫁)が女中を殺そうとするという後半はいいのだけれど、台詞でいちいち全部説明するのではなくヒッチコックみたく映像で全部説明すればもっとハラハラしてもっと面白くなったのにというのは無い物ねだりか。それでも報いを受ける間抜けな登場人物の結末は笑えるし、中でも二條朱美のアホらしい独り言からの顛末は必見。
ラストは子供を持つ者は強いというある納得の出来る世の道理とも言えるオチに。そして幸せそうな姿が健康的なためかなぜか見てるこちらもほっこり。
馬鹿馬鹿しいけれど、センスのあるスチール写真の使用法も見物。