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ファニア歌いなさいの映画初心者のレビュー・感想・評価

ファニア歌いなさい(1980年製作の映画)
3.8
良作。ナチスについて扱った作品。全体的に茶色っぽい映像、画面比率が4:3となっており当時の映像の質感を再現したのかと思った。当時の映像らしき(真偽は不明)を挿入するなどしていた。エモーショナルに見せるのでは全くなく、見守る作品。

映像に関してチープに感じてしまうところはあるが、それが逆に当時の再現ビデオを見ているような印象になり萎えるようなことはなかった。セリフなしで表情だけを撮ったショットが多く、その心のざわつきをとらえる演出が良かった。泣きの演技はテンプレではなく、1人1人泣き方が異なるのも良い。棺に誰が入っているのかをぎりぎりまで示さない演出も良い。ナチス側の人間も非ナチス側の人間も役者の演技が良かった。子供を連れ去った女性が、子供を亡くしてしまったことによるショックの顔が印象的。

群像劇的に数々の人との交流が描かれており、1人1人がモブではなく生きているということを感じさせられる。序盤の髪の毛を切られるシーンや丸坊主となった女性が無表情でベットに横になるシーンの悲惨さ。そして、時折聞こえてくる断末魔の中、音楽を奏でる。音楽を演奏すると笑顔になるような映画が多い中、この作品では悲しさを感じる。Yesとしか答えられない抑圧された環境下でただ演奏するしかない女性陣のむなしさが感じられる。悲しいから良いのではなく、指揮者と主人公の関係性だったり主人公と周りの人物との関係性の変化が良かったからこそなのだと思う。セリフでいえば、Play for me(私のために演奏して)がPrey for me(私のために祈って)とも捉えれるのも良かったかな。
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