テテレスタイ

キッズ・レボリューションのテテレスタイのネタバレレビュー・内容・結末

キッズ・レボリューション(2014年製作の映画)
3.5

このレビューはネタバレを含みます

10代でも見られるくらいに丁寧に作られた作品だと思う。
お金を主題にした作品だけあって、ストーリー全体がお金って何?という疑問の答えになっている。

初めは主人公(少年)は我欲を満たし、次に社会を良くしようと考え、周りが幸せになることでようやく自身の家庭にも幸せが訪れる。ここまでがストーリーの前半。前半で主人公が手に入れたのは信頼。お金は信頼もしくは信用によって成り立っている。
ストーリーの後半はお金に関する闇の部分。悪い奴らに追われて、警察にも追われて、そして、最後は溶鉱炉の場面になり、なんやかんや言うても所詮はお金はもともとは金属でしかなかったというオチ。
でも、主人公がストーリーの前半に撒いた種はちゃんと芽を出して幸せの花が咲いた。魔法のパンツも消滅してめでたしめでたし。終わり良ければ総て良し。

子供向けなので小難しい展開は避けて、視聴している観客をあんまり脅迫しないように気を使ってストーリーを作っているように感じる。お金が絡むテーマだと裏切りとか必ずセットになりそうなものだが、この映画に関してはそういう展開は少なくてストレスフリーで個人的には好印象。

ただ、本当に子供向けなのかなって考えると、そうでもないような気もして、そういう部分も面白い。

魔法のパンツって何だろうって考えると、無限に銀行から金を引き出せる力を持っているわけで、それって、まあ、税金を取り立てる能力だよねってことになると思う。「魔法のパンツ=徴税権」というメタファーで考えると、この映画は、国は税金で何をしているのかというストーリーに様変わりする。

主人公が商品をたくさん購入したシーンは景気対策で、ホームレスへの支援は社会福祉、警察のシーンは司法や行政といったように税金で国がやるべきことをストーリーで列挙していることになる。

ところが、最後の最後で「魔法のパンツ=徴税権」を溶鉱炉に捨ててしまう。
これはいったいどう理解するべきなのだろうか。国は徴税権を放棄するべきだとでも言いたいのだろうか。ここの議論は慎重にする必要がある。魔法のパンツは徴税権といっても独裁的な徴税権だ。

ググると、この映画はスウェーデンの映画であり、スウェーデンは大きな政府で諸外国と比べて税金が高く公務員の割合も多いことで有名らしい。ならば、大きな政府への批判と捉えるべきだろうか。ストーリーの終盤になってようやく警察が大人数で現れたことも、人数の割に仕事をしてないことへの皮肉だろうか。国に税金をやるくらいなら子供に与えた方がましだとでもいいたげなこの作品を僕はどう評価するべきなのか正直なところ困惑してしまう。他方でスウェーデンこそが理想の国家だとする識者も多い。もっと良い世界をと理想を求める心は、良い国に暮らしているからこそ育つような気がする。心だけは貧しくならないようにしたいものだ。
(スウェーデンという国への評価は僕の手にあまるので言葉を濁して退散するw)