一条和馬

真田十勇士の一条和馬のネタバレレビュー・内容・結末

真田十勇士(2016年製作の映画)
3.5

このレビューはネタバレを含みます

関ヶ原の後、真田幸村の元に(勝手に)集まった真田十勇士を主役に大阪冬の陣、大阪夏の陣を描く一作。元々舞台でやっていた物を一部キャストを変更して映画化したものだそうです。

この映画は真田幸村と十勇士の侍としての生き様、散り様を描くもの……ではございません!

顔が怖いせいで勝手に相手が深読みした事で今日まで生き永らえてしまった幸村と「折角だからその嘘、本当にしてやろうぜ」と天下相手に大噓を突こうとした猿飛佐助、そして集った十勇士達による「嘘を本当にする物語」です。

最初はコメディ…というかそもそもアニメから始まるこの映画。十勇士が集まるまでのテンポ、そして「絶対コイツ後でボケるで」という安心と信頼の後藤又兵衛役の佐藤二朗。野村萬斎の「のぼうの城」を彷彿とさせる奇策により勝利する真田丸での戦いなど「おっとこれは最後までこのノリかな?」と思ったその後。大阪夏の陣前夜に幸村がこれまでの全ての嘘を白状した上で「最後くらいは本物になりたい」と言い出し、物語は一気にシリアスへ移ります。どれくらいシリアスかというと佐藤二朗がボケる間もなく侍として討ち死に。「これはもうコメディさん死んだわ」となるのにはこれ以上ない配役と言えるのではないでしょうか。

その後十勇士の半数と幸村が徳川軍の陣を突っ切り家康に「誠の兵よ」と言わしめ「嘘を本当にした」のですが、ここで映画は終わりませんでした。「幸村」が主役ならここで終わりだったのでしょうが、この映画のタイトルは「真田十勇士」もうちょっとだけ続くんじゃ。

幸村に託され淀君と豊臣秀頼を大阪城から逃がす事計画を立てる佐助達の元に「淀君が半徳川派を集めて一網打尽にする計画に手を出せば秀頼だけは助ける」という密書を貰っていた事が判明。それを許せない霧隠才蔵と猿飛佐助が互いに命を奪い合うのですが、それも「嘘」。実際は徳川の追っ手を騙し、秀頼達を逃がす為の芝居でした。淀君は散っていった武士達への償いとして崩れ行く大阪城と運命を共にしますが、その後佐助達は生き延びて……。と言うのが本編のお話。エンディングのスタッフロールでは序盤のアニメを彷彿とさせる紙芝居でその後が描かれており、旅芸人として「真田の戦」を布教しながら海を越え新たに仲間を加えた「真田十三勇士」として、天草四郎と名を変えた豊臣秀頼と共に徳川に喧嘩を売る。で終わります。

コメディとシリアスの温度差が激しく、特に真田丸での戦の後急にギクシャクしてシリアス場所だけどうもしっくりこなかったのですが、幸村の決意と共に迎えた夏の陣で一気に盛り上がり、そして最後で「やっぱコイツ等ブレねぇな」となりました。ただ残念なのは「十勇士」なのに数名名前アリのモブくらいの活躍しかなかった事。十勇士集めの時に「この際お前でいいや」と適当に集められた算盤侍や、真田家武術指南役の二人など他の十勇士に比べると然程クローズアップもされる事なく夏の陣で討ち死にしてしまいました。残りのメンバーが濃いだけあってそこは残念で仕方なかったです。ただ全体的に見れば中だるみもせず最後まで視聴でき、そして笑顔でスタッフロールを迎えられる良い映画でした。
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