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アイ・イン・ザ・スカイ 世界一安全な戦場のmovieJackのレビュー・感想・評価

4.0
衛星と無人ドローン爆撃機による現代のリアルな戦争と軍隊・兵士達

あらすじにも書かれているが

イギリスの地下司令部でモニタ監視のみで全ての指示を行う
軍諜報機関の将校とそのデータ処理等を行う部下2名

また別のイギリスの官邸
豪華な調度品が並ぶ貴賓室のような部屋で
政治家等3名とテーブルを囲みながらモニタ画面とパソコン・電話により
政治的な最終判断を確認しながら
上記司令部の将校に指示を行う国防相の中将(今作戦のトップ)

その判断結果等により指示を受ける
アメリカ ネバダ州の基地に設置された小さなコンテナ位の部屋にて操作する
ドローン戦闘機の操縦士と補佐(機器やカメラ操作等)の2人

ハワイの基地で衛星画像による人物特定のみを行う解析専門兵

現地ケニアで
テロ犯の間近で小型ドローンで監視するワゴン車チームと
突入部隊兵士達を指揮する司令官

これほど世界各地に点在する
兵士と指揮官との指示系統の確認と連絡の緊張感と
指令室からの指示により
まるでTVゲームの様に安全な室内から爆撃する現代の戦争だが
当然の如く一方的な爆撃の恐怖と
忘れてはならない周辺への被害が痛感される

ドローン操縦士や最前線の緊迫感は
キアヌ・リーヴスの「スピード」的に次から次へ問題やトラブルが発生するも
それに瞬時に対応してゆくテンポ感
計算され尽くした構成が非常に上手くて楽しめるが
前情報を入れず観た方が絶対に楽しめる作品



【なので以下少しネタバレ注意】


全編を通してどこまで誇張して演出されているか解らない部分もあるが
現代の戦争と軍隊のリアルが多く垣間見れ

衛星画像の鮮明さとその映像により身体の一部のパーツだけでも瞬時に人物を特定する技術のスピードと精度

爆撃の着弾位置による周囲に与える被害想定をリアルタイムに算出し
周辺への被害を最小限に抑えるよう計算する担当兵の存在も知らなかったが
パーセンテージで表される被害予想により爆撃の可否を判断する基準が有るのだろうが
上司の無言の圧力により数値を修正(下げる)する部下の姿は
一般企業の数値改ざんや虚偽の報告と同様と思われ
いつか内部告発に繋がり身を滅ぼす謝罪会見レベルであろうが実際の軍でも多々在るのであろう…
数年追い続けたテロ犯を子供一人の影響で作戦を中止する事は成果主義ではないだろうが
責任者クラスでは確かに止まれない…
でも一般人に被害が及び…
関係者全員が永年苦しみを抱えて生きる現実

また現地実務隊のバレるの・バレないのハラハラ感や
指揮官とドローン操縦士とのやりとり
撃つの・撃たないの緊張感も良かったが
新米操縦士という設定も上手いが
少女への被害を理由に指揮官の命令を拒否するのは今までの軍物では異例だと感じたが
周辺被害等の理由があれば進言でき納得出来なければ拒否しても良い等の規則が有るのだろう
一昔前の軍隊なら絶対服従だろうし
操縦士の居る基地の直属の上官は苦虫を噛み潰した顔で「なぜ命令に背くっ‼」的な表情であったが
作戦終了後に声を掛けた時には
「お疲れさま」と笑顔で出迎えるというのも近年の会社組織での
パワハラや内部告発等で上司が訴えられる現代のリアルで
今の我々中間管理職と全く同じで厳しく指導や管理はできないのであろう…
また、兵士が戦場でのPTSD(心的外傷後ストレス障害)対策により
無理な攻撃や作戦には細心の注意を払って遂行していると感じられた

そして政治家の綺麗事を並べて責任を取りたくないという姿勢の責任放棄
悩み抜いた挙げ句に自分の保身のみを考え上役へ確認するという逃げ
そしてその大臣等は事の重大性を認識しないまま卓球しながらのOK返答
現場だけが振り回される組織の現状もリアル…
でも誰しも人命に関わる判断は下せないだろうと思う…
このやりとりの焦らされる感は
今作の演出的には必要なのだが
一般企業でも当然現場では判断できない事が多々ある現実だが
それは戦場では本当に無駄なやりとり(泣)

最後にやはり
ドローン技術の進化に驚き
無人機による空爆は以前から知っていたが
小鳥形ドローンや更に小さいカナブン程のドローンを操作し
屋内までも侵入させて撮影し司令部に映像を送信するのには驚きと共に
その気になればプライベートなんて全て暴かれる恐怖…
これからアレやコレはカーテンをキッチリと閉めてやらなければ…(笑)
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