二階堂じぞー

レッドタートル ある島の物語の二階堂じぞーのネタバレレビュー・内容・結末

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このレビューはネタバレを含みます

絵柄がシンプルかつ綺麗でジブリだな~って感じるけど、人物なんかを見てるとときどきふとタンタンの冒険みたいな顔だなと思ったり。
オシャレなものなんて少しも出てこないのに画面全体が当然のようにオシャレで、これがフランス…すごい…

あー!とかわー!とかいう声以外のセリフがなくBGMもなく、全体的に静かな場面が続くのだけど、その分、竹の葉が擦れる音だとかさざ波の音だとか自然のSEに聞き入る。

ストーリーは無人島に漂着した男が海亀を殺したところ、その海亀が人間の女性に変身して一緒に暮らすようになり、ついには子を為し、そのうち子は独立し、歳をとって男は死ぬ。すると女性は海亀に戻る。という昔話のような顛末。
ただこれを額面通りに受け取っていいのか、説話として考えるべきなのか、それとも全て男の幻想でしたという世にも奇妙な物語なのかはわからなかった。

海亀が女性になる、という点がもちろん1番不思議ポイントではあるのだけど、私はそれより息子のことが気になった。
小さいときに海に落ちて海亀と出会ったり、津波のあと沖まで海亀をお供に父親を探しに行ったり、主人公の男の預かり知らぬ(はずの)場面で海亀ハーフを感じさせる息子。
その彼が父親の話す人間社会に憧れて島を離れることにどんな意味があるんだろう?
父親の「帰りたい」という願望が息子に託されただけ?
それとも自分や故郷の素晴らしい才能にもかかわらず都会的なものに憧れて無謀なことをする若者として描かれている?
ただ男の息子について幻想する力の限界に達したので物語から合理的にフェードアウトした?

考えれば考えるだけ仮説立て放題で、何から何まで受取り手の想像に任されている。
おそらく明確な答えが出ない分、いつまでも自分の中で咀嚼し続けられてしまう作品でした。