ひらり前歯

好きにならずにいられないのひらり前歯のネタバレレビュー・内容・結末

好きにならずにいられない(2015年製作の映画)
3.0

このレビューはネタバレを含みます

生活には、価値観の押し付け、偏見予断が溢れていて苦しい。
フーシは、確固たる趣味も仕事も友人も持ち、母親のことも尊重していて、誰に迷惑をかけるでもないのに、多くの人が彼を認めない。
自分たちの価値観こそが普通で正しく、彼のような人間は矯正されるべきだと呼吸をするように自然に考える人たちがいる。
善意や思いやりからくる押し付けもあるし、自分たちの生活や価値観が揺らぐことに勝手に怯え暴力的なまでに排他的になる場合もある。そんな目に声に晒されて、フーシが臆病になっていったとしても責められない。

でも、成り行きであっても一歩踏み出し、そこから荒波に揉まれて、生活を引っ掻き回されても、誰に強制されたわけでもなく純粋に自分の意思でやりたいことをやり遂げた彼の口元に、最後、微かな笑みが浮かんだのをみてとても安堵した。この先だって安泰じゃないだろうけれど、この人はちゃんと歩みを進めていけるのだろうなと思った。