佐藤商事

好きにならずにいられないの佐藤商事のレビュー・感想・評価

好きにならずにいられない(2015年製作の映画)
4.5
だいたい100個くらいある、僕が旅に出る理由の上から10個目くらい。

雨がふる寝れない明け方に観始める映画ではなかった。タイトルとジャケットと全然印象ちがうじゃあねえか。みぞおちに一発良いのをもらったようなズシリと腹に何かが残るような作品でした。

自分自身も相当太っているので、同僚からのからかいの感じは生々しくて他人事ではなかった。
主人公の献身は単純な優しさなのか。そんなきれいなものではないと思う。期せずして眼の前に現れた女性に対する焦りやとまどい。優しくされるとすぐに好きになっちゃう感じ。下心。高揚感。舞い上がって勝手に色々と準備しちゃう感じ。距離の詰め方が分からずに一見「優しさ」ととれる相手が喜ぶであろうアクションを愚直に行うしかできない不器用さ。これらが本人にもわからないくらいにぐちゃぐちゃになったものを第三者は優しさと呼ぶのではなかろうか。
お前は俺か。
そんなフーシの口から放たれる「牛乳はある?よかったら牛乳を一杯もらえるかな。」の大パンチライン。安い恋愛小説が裸足で逃げ出すような情緒がこの言葉にはある。この精一杯感に涙が出る。もう誰も傷つくな。俺が抱きしめてやるぞフーシ。

どこまでも静かでゆるやかで、それでいて痛い映画でした。
ああなったら俺も旅にでる。思い出を道連れに。
佐藤商事

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