みおこし

好きにならずにいられないのみおこしのレビュー・感想・評価

好きにならずにいられない(2015年製作の映画)
3.5
アイスランド映画を初めて鑑賞!多くは語られないのに、心に深く突き刺さる秀作でした。

大巨漢の43歳男性フーシは、女性経験もなく、ジオラマやフィギュアの収集だけが唯一の趣味。周りから冷たい視線を浴びる孤独な日々を送ってきたが、母親の勧めで体験したダンススクールで出会った女性シェヴンに一目惚れするが...。

何とも切ないラブストーリーでした。誰よりも心優しいのに、その風貌から人柄を誤解されがちで、やることなすこと不器用なあまり周りの人からも冷遇されてきたフーシ。多くを語らない彼ですが、その表情からは彼が43年間背負ってきた苦しみが見て取れて、とにかくあの悲しそうな眼差しに胸が痛くなります。目を背けたくなるようなシーンも多々ありました。
しかし、嫌々始めたはずのダンススクールで初めて他者への恋心が芽生え、一人の男性としての自信を取り戻していきます。前半の暗い部分を観ていたからこそ、少しずつ希望に満ちていくフーシの姿が余計に心を打たれました。シェヴンとのダンスシーンには思わずほっこり。

"人は誰でも変われる"というメッセージを伝えてくれる映画はこの世にたくさんありますが、そのままトントン拍子に物事がうまくいって大団円...という展開が特にハリウッド映画にありがち。でも本作は"人は自分次第で変われるけれども、そこから一歩先に進むのはとても難しい"という、決して夢物語で終わらせないより現実的な側面もしっかり描いているのがまた魅力だなと。
内面も外面も、心のスイッチ1つで簡単に全て切り替わったら最高だけど、そんなに楽なことはないわけで。しかもフーシはフーシとして43年という長い時間を過ごしてきてしまったので、抜本的に自分を改革するにはそれなりの時間と労力が必要になります。
シェヴンとの交流を経て、だんだん彼の心に訪れた変化がそのまま持続できて、彼が完全に一歩前進できるのか、あえて答えを明確にしないエンディングは逆に心に深く残りました。きっと彼は変われると信じているし、希望も感じられたけれども!
年が明けて2020年は何かをリセットしなきゃなと悶々としていましたが、そのためには本気で取り組まなきゃダメだぞというキツい気合いを注入された気がします。ポスターは可愛い感じに作られてますが、結構キツめの内容なので覚悟して観たほうが良さそうです(笑)。

アイスランドの映画に馴染みがないこともあり、見慣れない俳優さんたちのリアルな演技がとても印象的でした。フーシ役の俳優さんは、アイスランドでは有名なコメディアンらしいです。今回めちゃめちゃ暗い役だったから、普段の彼のコミカルな様子も見てみたい!
みおこし

みおこし