新品畳

好きにならずにいられないの新品畳のレビュー・感想・評価

好きにならずにいられない(2015年製作の映画)
4.3
効能というものは寡黙だ。
映画を見る意味について上手く語れる人が実はいないのもそういう性質があるからのように思う。

「意味を語れないものに意味などないから無くなった方がいい」という暴論から、どうにか対象を守る手立てとして、無理くり大義を付け加えて存続の正当性を得ようとすることがよくある。

だが、その手段はあらゆる表現がメッセージを持つ前提でないとその存在を認められにくい世界を肯定することにもなる。

本当は何にだって意味なんてなくていいはずなのだ。
見た目が綺麗でなくても、痛みを言葉に変えることができなくても、人を幸せにすることができなくても、そこにいていい。

映画だって本当はそうなのだ。
多くの人には分からない隠喩があってもいい。受け手だって映画が発する隠された情報に確信が持てなくたっていいし、誤解であってもいい。

そこで得た「なにがしか」はふとした瞬間に語り出すかもしれないし、一生喋らないかもしれない。

それでも映画があったこと、触れたことで得た1時間30分は消えずに一つの風景になる。

その風景に意味などないから私たちは贅沢で豊かなのだ。

そんな事を思えた映画だった。
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