claire

天国はまだ遠いのclaireのレビュー・感想・評価

天国はまだ遠い(2015年製作の映画)
4.5
当たり前のことを言うと、完全に「ハッピーアワー」(=「カメラの前で演じること」)以降であり、「偶然と想像」以前の作品である。そして傑作。手前の五月、モニターの中の雄三、奥の三月、加えて雄三を見つめるカメラが同一のフレームに映し出されるとき、複数の〈眼〉が(多声的ならぬ)多眼的に、見る/見られるの権力関係を複数化し複雑化する。その時に放つ雄三の「その目が嫌いなんだよ」という台詞は、カメラあるいはモニター越しに対象を見る五月に向けられたものである。「カメラの前で演じること」を読む限り、「聞くこと」や「他者を演じること」のワークショップが変奏されてこの脚本に組み込まれていて、この延長線上に『偶然と想像』第三話「もう一度」がある。今回のそれは、メソッドとしては演技だけど物語上は「憑依」であって、このあたりの濱口竜介の「人が演じること」へのオブセッションと、それを物語としてどう面白く見せるかの巧さはこの時点で圧倒的だ。
claire

claire