はるかわ

天国はまだ遠いのはるかわのレビュー・感想・評価

天国はまだ遠い(2015年製作の映画)
4.5
たった3人の登場人物の、目と言葉。
全員がそれぞれの思考回路と言葉づかいと声の抑揚を持っていて、どの言葉にも、その人から発せられたという必然性を感じる。
「時間のフレームの強固さ」「姉という人間の輪郭」…三月の死についてずっと言葉を重ね考え続けてきた五月の言葉は、強張って閉じている。それに対して、斜に構えてぶっきらぼうにしか喋れない雄三。
過去について説明されるカフェのシーンも、それを説明的と感じる余裕なんてないほどに、会話がスリリングだ。

フィックスのカメラに映り込む抱擁。
「姉という人間の輪郭」をとらえる言葉を必死に探してきたけど、本当はずっと姉に触りたかった。手を握って甘えたかった。

映画の中の曖昧さが癖になり、何度も見返してしまう。ラストの語りが三月のかわりに雄三だったら、さらに曖昧さが増した気もする。2カットだけの短いシーンだけど、濱口監督の撮る電車の車内が大好きだ。
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